リノベーションをするにあたっては内装や外装、そして法的基準の知識が必要です。

ただ、そのような知識だけで足りるかというと、決してそうではありません。業者との打ち合わせの中では様々な用語が出てきます。知識は多いほうが有利なのです。

ここで取り上げる石膏ボードもその1つ。目立たない建築資材ですが様々な箇所に使われているので、リノベーションを考える上では無視はできません。

しかし、意外と知られていない部分があるのも確かです。

そこで、ここでは石膏ボードを取り上げ、その特質やメリット・デメリットを中心に解説します。

石膏ボードとは

石膏ボードとは イメージ

まずは石膏ボードとはどのような資材かを解説しましょう。

どのような資材か

石膏ボードは石膏を板状に成形し、その表面と裏面を石膏ボード用原紙でカバーした資材です。

防火性、遮音性、寸法安定性、加工性などに優れます。

使用用途としては内装の壁や天井材など、非常に多くの部分に使われます。

ちなみに石膏の成分は硫酸カルシウムです。分類としては鉱物に属しますので、石や砂に性質が似ていると言えるでしょう。

製造について

石膏は原料を炉で焼成して粉砕、その上で水と反応させてボード状に成型します。そのボード状の石膏板に原紙を張り付けて完成です。

石膏を焼成すると焼石膏という素材になり、水と混合させるとセメントのように固まります。比較的早いスピードで硬化するので、生産性も上がり、コストパフォーマンスも高くなるのです。


石膏ボードのメリット

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それでは、石膏ボードにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

代表的なメリットを挙げてみましょう。

コストパフォーマンス性が良い

まず挙げられる点はコストパフォーマンス性が良い点です。

石膏ボードは石膏から作られるので安価です。

また、石膏ボードは基本的には構造部材に張って壁や天井を作るので建築コストが抑えられます。

ところで、内装材のボードにはケイカル板があります。どちらも安価なのですが、価格を比較するならば石膏ボードに軍配が上がります。

なお、リノベーションは家屋全体にする場合が少なくありません。そのため、使用する内装材の量も多く、わずかな資材費が全体で大きく膨らむケースもあります。そのため、資材は少しでも安いほうが好ましく、石膏ボードが使われるのです。

優れた施工性

石膏ボードは施工性に優れる点もメリットと言えます。現場での加工も比較的容易です。

ところで、資材の施工性は末端ユーザーには関係ないと思えるかも知れません。「職人の資材を加工する手間は客には関係ない」と思う人もいることでしょう。

しかし、決してそうとは言えません。

と言うのも、施工性は工賃と工期に直結するからです。

施工性の良い資材であれば職人の能率が上がるので工賃も抑えられます。また、施工が容易であれば工期の短縮も狙えるでしょう。

工賃と工期短縮は建築コストを抑える点で大きな意味を持ちます。石膏ボードの施工性はユーザーにとってもメリットと言えるのです。

寸法安定性が良い

寸法安定性が良い点もメリットと言えます。

石膏ボードは温度変化による変形がほとんどありません。そのため、施工後の反りなども生じないのです。

その点、寸法安定性に欠けた素材を使うならば、室内はひどい状態にもなり得ます。例えば、エアコンの影響をダイレクトに受ければ壁にゆがみが発生するでしょう。また、壁紙の剥離などにも影響するかも知れません。

しかし、石膏ボードは寸法安定性に優れる素材。そのようなアクシデントは発生しないのです。

防火性に優れる

防火性に優れる点も大きなメリットです。

石膏は無機物ですので燃えないのですが、それと併せて火炎に強い秘密がもう1つあります。

それは石膏ボードに含まれる水です。

実は石膏ボードには水分が含まれており、高熱になると水蒸気として外部に出ます。そうすると、ボード周辺の温度上昇が抑えられるのです。

内装材の燃えにくさは火災の時の住人の安全性に大きく関与します。そして、少しでも燃えにくければ脱出の時間稼ぎにもなります。その点で石膏ボードは優秀と言えるのです。

遮音性に優れる

遮音性に優れる点も大きなメリットです。石膏ボードを張った壁は優れた遮音性を発揮します。

実際、木造住宅には石膏ボードを使った壁が多いですが、壁からは隣の音があまり聞こえません。石膏ボードを張った壁が音を遮っているからです。

ちなみに、遮音性の欠ける壁であったならば、どのような事態になったでしょうか。

隣の部屋の会話が聞こえるし、こちらの電話での会話も筒抜けになるかも知れません。プライバシーの点で大きな問題となるのです。

その点、石膏ボードを張った壁であれば遮音性が確保されます。プライバシーについても問題にならないのです。


石膏ボードのデメリット

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このように、石膏ボードには優れたメリットがあるのですが、デメリットも覚えておくべきです。

それでは、石膏ボードにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

集中的な力に弱い

普通の生活を送る範囲であれば、石膏ボードは大きな力が加わっても壊れることはほとんどありません。

例えば、子供がふざけて壁に体当たりをしたとしても、壁が壊れることは無いでしょう。

しかし、力が小さな部分に集中して加わるならば話は別です。意外に簡単に壁は破損してしまいます。

子供が尖ったものを持っていて、誤って壁にぶつけてしまうと、壁は案外簡単にへこんでしまう場合があります。

これは小さな部分に力が集中して加わったため。石膏ボードの弱点なのです。

ネジやクギが使えない

石膏ボードにはネジやクギが使えません。仮に使ったとしても、十分な強度を保持することができず、簡単に引き抜けてしまいます。

これは石膏ボードにネジを打つと、ネジ山の部分に力が集中してしまうため。そのネジ山の部分が破損してしまい、ネジが引き抜けてしまうのです。

なお、ネジがそのままでは使えないのでアンカーでの施工が望ましいのですが、アンカーであっても種類を選ばないと破損につながります。リノベーション後に何かを壁に取り付けたい場合には、どのアンカーにするか注意をして決めなければいけないのです。

湿気に弱い

湿気に弱い点も石膏ボードのデメリットです。

石膏ボードは石膏と紙から作られた資材のため、あまり水には強くないのです。

また、湿度を許容量より吸ってしまうと、強度が低下してしまい、脆くなってしまいます。使用にあたっては注意が必要なのです。

カビが生える場合がある

石膏ボードにビニールクロスを張った場合、石膏ボードが吸った湿気が石膏ボードとビニールクロスの間にたまる場合があります。石膏ボードは湿度が高いと湿気を吸い込み、湿度が低いと吐き出す性質があるのですが、その性質が悪さをして湿気をため込むのです。

そうすると、湿気のたまった部分にカビが発生するケースがあります。カビはアレルギー物質を放散するので、空気環境の点でよくありません。

しかも、クロスの裏側のカビは見つけにくく、除去は困難なのです。


まとめ

石膏ボードについて解説しました。石膏ボードについて、知識が深まったことと思います。身近ではあったのですが、なかなか知る機会のなかった資材…という人も多かったのではないでしょうか。

ともかくとして、リノベーションの打ち合わせには壁をどうするかについても挙がると思います。その際には石膏ボードの知識も有用なので、より実りのある話し合いとなることでしょう。