住宅の新築時だけでなく、リフォームやリノベーションを行う際にも、建築基準法に沿っているかどうかをしっかり確認しておく必要があります。建築基準法に違反すると罰則を受ける恐れもあるため、違反のないよう設計と工事を進めたいところです。


この記事では、リフォーム・リノベーションを計画する際に押さえておくべき、建築基準法のポイントやルールを解説します。

リフォーム・リノベーションで守るべき建築基準法の基本ポイント

まず、リフォーム・リノベーションにも影響してくる、建築基準法の基本的なポイントを紹介します。

増築時に気を付けたい建ぺい率・容積率

建築基準法により、市街化区域などでは、用途地域ごとに建ぺい率・容積率の制限が設けられています。定められた建ぺい率・容積率を超える規模の建物は、原則建てることができません。




建ぺい率

敷地面積に占める建築面積(建物を上空から見たときの面積)の割合

容積率

敷地面積に占める建物の延床面積(すべての階の床面積を合計した面積)の割合

リフォーム・リノベーションで問題になりやすいのが、増改築を伴うケースです。増改築の対象となる面積が10m2以下であれば建築確認の対象外とされていますが、元の建物が建ぺい率・容積率ギリギリで建てられている場合、少しの増改築で規定を超えてしまう恐れがあります。


増改築を検討するときは、建ぺい率や容積率にどれくらい余裕があるのか、あらかじめ確認しておきましょう。

間取り変更で気を付けたい構造に関する規定

後ほど紹介しますが、建物の主要構造部の一つについて、全体の1/2を超えて修繕したり模様替えしたりする場合、多くのケースで建築確認申請が必要となります。

 

一方、修繕や模様替えの範囲が全体の1/2に収まっていれば、建築確認申請は不要です。ただ、間取り変更で仕切り壁や柱の数・位置などを変更する場合、建物強度に問題ないかどうかは要注意。申請の要不要に関わらず、適切な計算を行い、建築基準法の規定に沿っているかをチェックしましょう。

間取りや窓の変更で気を付けたい採光・換気の規定

リフォーム・リノベーションで間取りや開口部を変更する場合、それぞれの居室で、採光・換気の規定が守られているかどうかをチェックする必要があります。



採光に関する規定

採光できる窓などの開口部を、居室の床面積の1/7以上設けること

換気に関する規定

直接外気につながる開口部を、居室の床面積の1/20以上設けること

採光や換気の規定を満たさない場合、居室扱いできなくなるだけでなく、快適な室内環境を維持できなくなるでしょう。


建築確認申請が必要なリフォームとは? 


リフォームやリノベーションで気を付けたいのが、建築確認申請が必要か否かという点です。2025年4月の法改正での変更点もあるため、十分注意しましょう。

建築確認とは?

建築確認とは、計画された建物が建築基準法の規定を満たしているか、着工前にチェックするための法的な審査手続きのことです。建物の新築時には原則必要となるほか、増改築や、この後紹介する大規模なリフォームにおいても必要になる場合があります。

 

対象となる工事を行う場合、建築確認を受けて「確認済証」を交付されてからでないと着工できません。建築確認が必要にもかかわらず怠ると、建築基準法違反として、懲役1年以下または罰金100万円以下の罰則を受ける恐れがあります。


この罰則は、通常設計者や施工者が対象ですが、施主の故意によって行われた不正と認められれば、施主に罰則が課されることもあるので注意しましょう。

【2025年法改正】建築確認申請が必要なリフォーム

2025年4月施行の建築基準法改正によって、これまで建築確認申請が不要だった、木造2階建てにおける「大規模の修繕」および「大規模の模様替え」の建築確認が原則必須となりました。




大規模の修繕

主要構造部(壁、柱、上階の床、梁、屋根、階段)のうち1種類以上について、1/2を超える範囲で修繕すること。

大規模の模様替え

主要構造部(壁、柱、上階の床、梁、屋根、階段)のうち1種類以上について、1/2を超える範囲で模様替え(性能向上を目的とした改造)すること。

(出典)国土交通省「参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度


具体的に、建築確認申請が必要な場合・不要な場合の例をまとめると次のとおりです。

 

工事箇所等

申請が必要な例

(工事範囲が1/2超の場合)

申請が不要な例

増改築

10㎡を超える増改築

10㎡に満たない増改築

屋根

垂木まで及ぶ大がかりな改修

カバー工法による葺替え

外壁

スケルトンリノベーション

カバー工法による張り替え

根太まで及ぶ大がかりな改修

(2階以上の床)

フローリングの重ね張り

1階床の改修

階段

架け替えを伴う改修

床材の重ね張り

(出典)国土交通省「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について 【令和7年1月14日時点】

 

なお、増改築の工事部分に関しては、省エネ基準への適合も求められる点に注意が必要です。一方、リフォームは省エネ基準適合の対象外となっています。


リノベーションの際に気をつけたい耐震基準や安全規定


リノベーションを行う場合、耐震基準や安全規定への配慮も必要です。主なポイントを紹介します。

【間取り変更】必要壁量のチェックが必要

リノベーションでは、間仕切り壁を撤去して、使いやすい間取りに変更するケースも多くあります。ここで気を付けなければならないのが「必要壁量」です。必要壁量とは、地震時などに建物を支えるため必要な「耐力壁」の量のことで、基準が法令によって定められています。

 

必要壁量を満たしているかどうかは、建築基準法の耐震基準に直結します。建築確認申請が不要なケースであっても、必要壁量を計算せずに間仕切り壁を撤去してしまうと、耐震基準不適合となる恐れがあるので注意しましょう。

【キッチンリノベ】内装材や区画方法に要注意

リノベーションにおいて、キッチンは特に要注意な箇所です。厳密には消防法の規定にかかる部分ですが、重要なポイントなので紹介します。


明るく開放的なキッチンは人気ですが、内装材や区画方法については法律で制限が設けられています。IHクッキングヒーターを使う場合、対象にならないことも多いですが、消防指導で制限を受けるケースもあるため注意が必要です。

 

ガスコンロを設置する場合、最上階以外にあるキッチンは「火気使用室」として、壁・天井の内装材を不燃性能のあるものにしなければなりません。不燃性のない壁紙や、無垢材のウッドパネルなどを使用するのはNGです。

 

加えて、火気使用室は、その他の空間と壁や扉で区画するか、不燃材料でできた50cm以上の垂れ壁で区切ることが求められます。垂れ壁を設けずに開放的な作りにしようとすると、一体的なリビングダイニングにも、上記の内装制限が適用されます。


3階建てのリフォームで気をつけたい直通階段の規定

建築基準法では、3階建て住宅において、緊急時の避難経路確保を目的に「直通階段」を設けることが規定されています。直通階段とは、各階から避難階(通常は1階)まで直接向かうことのできる階段のことです。


通常、直通階段には、曲がり角や扉を設けてはならないとされています。ただし、3階建て住宅に関しては緩和要件があり、途中に曲がり角を設けたり、踊り場に扉を設置したりすることが可能です。住宅の場合、いつも生活している家族が利用する前提であり、避難に支障がなければ問題ないからです。

 

ただし、階段を結ぶ経路上に扉が複数ある場合などは、規定違反となる恐れがあります。3階建てで間取り変更を予定しているケースでは、この点も注意しましょう。

 

建築基準法違反を避けるためのチェックポイント

リフォーム・リノベーションを行う場合、設計・施工するリフォーム会社側で建築基準法への適合性を考慮するため、施主に特別な対応を求められることはほぼありません。リフォーム会社に工事を依頼すれば、通常、建築基準法違反にはならないということです。


大切なのは、建築確認申請が必要なケースで、申請がしっかり行われているかをチェックすることです。建築確認申請の要不要は、次の手順でチェックするとよいでしょう。


【建築確認申請の要不要チェック】

①増改築をするか?

 → 増改築面積が10㎡を超えるか?

②主要構造部(壁、柱、上階の床、梁、屋根、階段)を改修するか?

③主要構造部の1種類でも、改修範囲が1/2を超えるものがあるか?

 

<申請が必要なリフォーム>

・①の両方が当てはまるリフォーム

・②③の両方が当てはまるリフォーム


リフォームにおける建築確認申請時の流れ



建築確認が必要なリフォームを行うときは、次の流れで進めるのが一般的です。

 

①設計図や構造計算書などの設計図書を作成する

②申請書類を建築主事に提出し、建築確認を申請する

③審査を受けて、確認済証が交付される

④着工、建築工事を実施

⑤工事完了後に完了検査を受けて、検査済証が交付される

 

なお、リフォームで建築確認を申請するには、新築時の検査済証が必要となります。検査済証がないと、既存の建物が適法かどうか判断できないためです。

 

しかし、築古の住宅では検査済証が未交付というケースが大半を占めます。検査済証がない住宅で建築確認申請を行うには、事前に「建築基準法適合調査」を受ける必要があります。この調査は民間審査機関によって行われ、クリアすることで検査済証の代わりとして、建築確認申請を行えるようになるのです。


建築基準法違反を防ぐには、信頼できるリフォーム会社に依頼しましょう

リフォーム・リノベーションにおいても、建築基準法の規定に従ってプランを計画することが求められます。通常、リフォーム会社に依頼すれば法律違反になることはありませんが、なかには知識が不足していたり、違法性を認識しながら工事を進めたりする悪徳会社もあるかもしれません。

 

建築基準法に適合した、安全で快適なリフォームを実現するには、信頼できるリフォーム会社に依頼することが大切です。

 

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