ZEH(ゼッチ)とは?基準やメリットなど、注目の省エネ住宅をわかりやすく解説

地球環境への意識の高まりや、近年の電気代高騰などを背景に、住宅の省エネ性能への関心が高まっています。そのなかで注目されているのが「ZEH(ゼッチ)」です。
この記事では、ZEHの基本的な知識から、2030年に義務化が予定されている「ZEH水準」との違いや導入のメリット、活用できる補助金制度までわかりやすく解説します。
ZEHとは?
ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称です。国が推進する省エネ住宅の基準のひとつであり、今後の家づくりのスタンダードになっていくといえるでしょう。ここでは、ZEHとは具体的にどのような住宅なのか見ていきます。
ZEHとは「年間のエネルギー収支がゼロ以下の住宅」
ZEHとは、断熱性や省エネ性能を高め、太陽光発電などでエネルギーを創り出すことにより、年間のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅のことです。「消費エネルギー<創り出すエネルギー」となる住宅、と考えるとわかりやすいかもしれません。
具体的には、省エネ(再生可能エネルギーを除く)によって一次エネルギー消費量を20%以上削減するとともに、創エネを含めて合計100%以上の一次エネルギー消費量を削減することがZEHの基準として定められています。
2030年までに予定される「ZEH水準」適合義務化
住宅の省エネ化は国策として進められており、2025年4月からは、すべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されました。この動きはさらに加速し、2030年までには、より高いレベルである「ZEH水準」の省エネ性能がすべての新築住宅に義務付けられる予定です。
これからの家づくりにおいて、ZEH水準の省エネ性能を満たすことは特別なことではなく、むしろスタンダードといえるでしょう。
ZEHと「ZEH水準」の違い
2030年までに適合が義務化される予定の「ZEH水準」とは、具体的に「断熱等性能等級5」および「一次エネルギー消費量等級6」を満たす住宅性能を指します。
ZEHが太陽光発電システムなどの「創エネ」設備を必須とするのに対し、「ZEH水準」では必ずしも創エネ設備は求められません。断熱性と省エネ性を高めることで基準をクリアできる点が、ZEHとの大きな違いです。
ZEHを構成する3要素「省エネ・断熱・創エネ」
ZEH住宅は、大きく分けて「省エネ」「断熱」「創エネ」という3つの要素で構成されます。これら3つの要素をバランスよく組み合わせることで、エネルギー収支ゼロ以下のエコで快適な暮らしを実現するのです。以下では、3つの要素について詳しく解説します。
要素①「省エネ」
エネルギー消費を抑える「省エネ」はZEHの基本です。LED照明や、少ないエネルギーで効率よくお湯を沸かす高効率給湯システム、省電力の住宅設備や家電製品などを採用し、住宅全体のエネルギー消費量を削減する必要があります。
そのうえで、家庭内のエネルギー使用量や太陽光発電による発電量などを「見える化」する、専用システム「HEMS(ヘムス)」の導入も求められます。
要素②「断熱」
ZEHの実現には、エネルギー効率を高める「断熱」も欠かせません。高性能な断熱材を壁や天井、床に施工したり、室内外の熱の出入りが多く生じる窓に、断熱性と気密性に優れた製品を採用したりするのが主な方法です。
住宅の断熱性が高まることで、外気の影響を受けにくくなり、冷暖房の効率が格段に向上します。少ないエネルギーで、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を維持できるため、年間の消費エネルギーを大幅に削減できます。
要素③「創エネ」
自らエネルギーを創り出す「創エネ」も、ZEHを構成する重要な要素です。太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー設備を導入し、家庭で消費するエネルギー量を上回るエネルギーを生産しなければなりません。
生産した電力は自宅で利用できるほか、余剰電力は電力会社に売電することが可能です。また、太陽光発電と併せて蓄電池を導入するケースも多くなっています。
ZEHがもたらす5つのメリット
ZEHは環境に優しいだけでなく、私たちの暮らしにも多くのメリットをもたらします。ここでは、ZEHの代表的なメリットを5つ紹介しましょう。
(1)光熱費を削減できる
ZEHの大きなメリットが、光熱費を大きく削減できる点です。高い省エネ性能と断熱性能によって、特に冷暖房にかかる電力代を節約できます。さらに、太陽光発電で創り出した電気を自家消費することで、電力会社から購入する電力量を減らせるのも大きなポイント。余った電気を売電すれば、収入を得ることも可能です。
(2)ヒートショックや室内熱中症の予防になる
断熱性と気密性に優れるZEHは、季節を問わず室内温度を一定に保ちやすいという特長があります。部屋ごとの温度差が小さくなるため、冬場に起こりやすいヒートショックのリスクを減らせます。また、夏場の厳しい暑さのなかでも室温の上昇を抑えられるため、室内熱中症の予防にも効果的です。このように、一年を通して快適で健康的な暮らしが実現します。
(3)災害による停電時にも電気を使える
太陽光発電システムとともに蓄電池を導入すれば、発電した電気を蓄えておくことができます。これにより、地震や台風などの災害で停電が発生した際にも、非常用の電力として使用可能です。明かりを確保したり、スマートフォンの充電をしたりと、万が一のときでも電気を使えることが大きな安心感につながるでしょう。
(4)高値で売却できることがある
ZEH住宅は、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が定める、省エネ性能の評価制度「BELS(ベルス)」において高い評価を得られます。BELSは住宅の省エネ性能を客観的に示す信頼性の高い基準であり、評価が高いほど不動産としての資産価値も高くなる傾向です。
そのため、将来住宅を売却することになった場合、一般的な住宅よりも高値で売却できる可能性があります。
(5)補助金などを利用できる
ZEH住宅の普及を促進するため、国はさまざまな支援制度を用意しています。代表的なものが、建築や購入の際に利用できる補助金制度です。
また、住宅ローン減税においても、ZEH水準住宅は一般的な住宅に比べて借入限度額が高めに設定されており、より手厚い税制優遇を受けられます。これらの制度を活用すれば、初期費用を抑えることが可能です。
【2025年度】ZEH住宅で使える2つの補助金制度
ZEH住宅を新築・購入する際には、国の補助金制度を活用できます。ここでは、2025年度に利用できる代表的な2つの補助金制度について、その概要と要件を簡単に解説します。
ZEH支援事業
ZEH支援事業は、ZEHおよび、より高性能なZEH+(ゼッチプラス)を新築・購入する際に利用できる補助金制度。補助を受けるには、国に登録されたZEHビルダーまたはZEHプランナーが設計・建築などに関与していることが求められます。制度の概要は以下のとおりです。
対象住宅 | ・ZEH ・ZEH+:ZEHの条件に加え、以下の要件を満たす住宅 ①再生可能エネルギーを除き、25%以上の省エネを達成 ②外皮基準が断熱等性能等級6以上 ③追加の省エネ設備等を導入 |
補助額(定額) | ・ZEH:55万円/戸 ・ZEH+:90万円/戸 ※追加補助メニューあり |
主な交付要件 | ・ZEHビルダー/プランナーが関与する住宅であること ・所有者が自ら居住する住宅であること |
公募期間 | 2025年4月28日〜12月12日(一般公募・単年度事業) |
子育てグリーン住宅支援事業
ZEH水準住宅は、住宅省エネ2025キャンペーンの一環として実施される「子育てグリーン住宅支援事業」の補助対象にもなっています。
ZEH水準住宅の場合、1戸あたりの補助額は40万円で、建て替えで古家を解体する場合には1戸あたり20万円が加算されます。ただし、ZEH水準住宅で補助対象となるのは、子育て世帯または若者夫婦世帯のみです。
申請するには、あらかじめ事業登録した「グリーン住宅支援事業者」と工事請負契約などを締結することが条件となります。交付申請期間は予算上限に達するまでで、遅くとも2025年12月31日までとされています。
まとめ
ZEHは、「省エネ」「断熱」「創エネ」の3つの要素を組み合わせて、年間のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅です。地球環境への貢献だけでなく、光熱費の削減や健康的な暮らしの実現、災害時の備えなど、多くのメリットをもたらします。
2030年までには、すべての新築住宅にZEH水準の性能が求められるようになる見込みです。家づくりを予定している方は、これからのスタンダードとなるZEHを検討してみてはいかがでしょうか。