マンションの売却を考え始めたものの、何から手をつければよいのか、費用はいくらかかるのか、不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。マンションは大切な資産だからこそ、納得のいく形で売却を進めたいものですよね。


この記事では、マンション売却の基本的な流れから、売却時にかかる費用や税金、注意点まで分かりやすく解説します。

マンション売却の主な3つの方法

マンションを売却するには、主に「仲介」「買取」「個人間取引」の3つの方法があります。


仲介は、不動産会社に買主探しを委託する方法です。不動産会社が売却活動から買主との売買契約、引き渡しまでサポートしてくれます。マーケットで買主を募集するため、適正価格で売却しやすいのが特徴です。


買取は、不動産会社に直接マンションを買い取ってもらう方法です。売却活動が不要で、早く現金化できる反面、売却価格は仲介に比べて低くなる傾向にあります。


個人間取引は、不動産会社を介さずに買主と直接取引する方法を指します。仲介手数料がかからない反面、契約書の作成や手続きをすべて自分で行わなければならず、契約トラブルに注意が必要です。


都市部にある一般的なマンションの場合、仲介で売却を進めるのが基本です。この記事でも、仲介での売却を前提に解説していきます。

 

仲介でのマンション売却の流れ6ステップ


仲介によるマンション売却は、次の6つのステップで進んでいきます。全体の流れを把握しておくと、計画的に準備を進められるはずです。

 

【ステップ1】不動産会社へ査定を依頼する

【ステップ2】不動産会社と媒介契約を結ぶ

【ステップ3】売却活動を行う

【ステップ4】買主と売買契約を結ぶ

【ステップ5】代金決済・引き渡しを行う

【ステップ6】確定申告する

 

それぞれのステップの内容を詳しく見ていきましょう。

【ステップ1】不動産会社へ査定を依頼する

まずは、所有するマンションがいくらで売れそうか確認するため、不動産会社へ査定を依頼します。いきなり査定を依頼するのではなく、あらかじめ自分で周辺の似たような物件の価格相場を調べておくと、査定額が妥当かどうか、判断しやすくなります。

 

査定は、物件情報などをもとに概算価格を算出する「簡易査定」から始めるのが一般的です。Web上で複数の不動産会社にまとめて依頼できる「一括査定サイト」を利用するのもよいでしょう。簡易査定の結果が出そろったら、その中から信頼できそうな2〜3社に絞り、実際に物件を訪問してもらう「訪問査定」に進みます。

【ステップ2】不動産会社と媒介契約を結ぶ

査定価格や算出の根拠、担当者の対応などを比較検討し、仲介を依頼する不動産会社を選びます。選定した不動産会社と媒介契約を締結すると、正式に売却活動がスタートです。

媒介契約には3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

 

契約の種類

契約できる不動産会社の数

自己発見取引

売主への業務報告義務

レインズへの登録義務

一般媒介契約

複数社OK

なし

なし(任意)

専任媒介契約

1社のみ

2週間に1回以上

契約から7日以内

専属専任媒介契約

1社のみ

不可

1週間に1回以上

契約から5日以内

 

それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の状況に合った契約形態を選ぶことが大切です。

【ステップ3】売却活動を行う

媒介契約締結後、不動産会社が主体となって売却活動がスタートします。不動産会社は、不動産情報サイトへの物件情報の掲載や広告チラシの作成・配布、購入希望者からの問い合わせ対応などを行います。

なお、購入検討者から内覧希望があったときは、売主自身が立ち会って対応することも。内覧時の印象は物件を決める重要な判断材料になるため、売却活動がスタートしたら、室内はきれいに整理整頓しておきましょう。

【ステップ4】買主と売買契約を結ぶ

購入希望者から「購入申込書」が提出されたら、売却価格や引き渡し時期などの条件をすり合わせます。合意できたら、買主と売買契約を締結します。契約時には、買主から売却価格の5〜10%程度の「手付金」が支払われるのが通例です。

【ステップ5】代金決済・引き渡しを行う

売買契約を結んだ後、買主から残りの代金すべてが支払われると、「所有権移転登記」を行い、所有権を買主へと移します。残代金の決済と登記手続きが完了したら、物件の鍵や必要書類を買主に引き渡します。これで、マンション売却は完了です。

【ステップ6】確定申告する

マンションを売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年に確定申告を行い、所得税や住民税を納める必要があります。また、利益が出ていない場合でも、特例の適用を申請すると節税できる可能性も。いずれの特例を受けるにも確定申告による手続きが必須なため、マンションを売却したら、忘れずに確定申告を行うようにしましょう。

 

マンション売却でかかる費用と税金

マンションの売却には、いくつかの費用や税金がかかります。資金計画にも影響するため、どのような費用や税金がいくらぐらいかかるのか、事前に知っておくことが重要です。ここでは、売却時にかかる費用と税金の内容と目安を解説します。

マンション売却でかかる費用

マンション売却でかかる可能性がある費用は、以下のとおりです。

費用の種類

内容

費用の目安

仲介手数料

不動産会社が売買契約を成立させたときに支払う成功報酬

(売却価格 × 3% + 6万円) + 消費税 が上限(売却価格400万円超の場合)

引越し費用

新居への引越しにかかる費用

家族構成や荷物量、時期により変動

ハウスクリーニング費用

室内を専門業者に清掃してもらう費用

5万円〜10万円程度

住宅ローン一括返済手数料

住宅ローンを一括返済する際に金融機関に支払う手数料

金融機関により異なる(数千円〜数万円)

マンション売却にかかる税金

マンション売却でかかる税金には、以下のようなものがあります。

税金の種類

内容

税額の計算方法など

譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)

売却で得た利益(譲渡所得)に対してかかる税金

譲渡所得 × 税率(所有期間5年以下の場合:39.63%、所有期間5年超の場合:20.315%)

印紙税

売買契約書に貼付する印紙代

売却価格に応じて変動(1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円※軽減税率)

登録免許税

住宅ローン完済に伴う抵当権抹消登記にかかる税金

不動産1個につき1,000円(土地・建物合計で2,000円)

マンション売却で使える譲渡所得税の控除や特例

マンションの売却で利益が出た場合、譲渡所得税がかかります。ただし、自宅マンションの売却なら、控除や特例を利用して節税できる可能性があります。代表的な特例は次の2つです。

 

種類

内容

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除

譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度。所有期間の長短に関係なく適用可能。

マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

売却して損失が出た場合に、その損失をほかの所得(給与所得など)と相殺できる制度。

 

前述のとおり、これらの特例を適用するには確定申告が必要なため注意しましょう。

 

マンション売却時の必要書類

マンション売却時には、さまざまな書類を準備する必要があります。スムーズに手続きを進めるためにも、早めに準備しておくと安心です。主な必要書類を表にまとめました。

書類の名称

概要

本人確認書類

運転免許証やマイナンバーカードなど

住民票

現住所を確認するための書類

印鑑証明書

実印が本物であることを証明する書類

登記識別情報通知書(または登記済権利証)

いわゆる「権利証」のことで、売主が所有者本人であることを証明する書類

固定資産税納税通知書

毎年の固定資産税額が記載された書類

間取りなどが分かる資料

購入時のパンフレットや設計図書など

マンションの管理規約

マンションで守らなくてはならないルールが記載された書類

ローン残高証明書・抵当権抹消書類

住宅ローンが残っている場合に必要となる書類

 

マンション売却で気をつけるべき注意点


最後に、マンションを売却するうえで特に気をつけるべき2つのポイントをご紹介します。売却をスムーズに進めるためにも事前に確認しておきましょう。

住み替えの場合は新居の購入も意識する

住み替えのためのマンション売却である場合、現在の自宅の売却と新居購入のタイミングに注意が必要です。住み替えの進め方には「売り先行」と「買い先行」の2つのパターンがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

 

 

売り先行

(自宅の売却を先行して進める)

買い先行

(新居の購入を先行して進める)

メリット

・売却資金を新居の購入に充てられる

・資金計画が立てやすい

・希望の物件をじっくり探せる

・仮住まいの必要がない

デメリット

・売却が決まらないと新居を探せない

 ・仮住まいが必要になる可能性がある

・住宅ローンが二重になる可能性がある

 ・自宅がなかなか売れないと負担が増える

 

資金計画やライフプランに合わせて、自分たちに合った進め方を選ぶことが大切です。

査定は複数社に依頼する

マンション売却の第一歩である査定は、必ず複数の不動産会社に依頼しましょう。1社だけの査定では、その価格が高いのか安いのかを客観的に判断できません。複数社の査定結果を比較することで、所有するマンションの適正な相場を知ることができます。

 

また、査定額の高さだけで不動産会社を選ぶのは避けたほうがよいでしょう。その査定額を導いた理由や根拠を丁寧に説明してくれるか、売却活動の方針はどうか、自分たちの考えをしっかり聞いてくれるかといった点も確認し、信頼できる会社を見極めることがマンション売却を成功させるポイントです。

 

まとめ

マンション売却は、査定依頼から始まり、不動産会社との媒介契約、売却活動、売買契約、そして引き渡しと、6つのステップを踏みながら進んでいきます。売却時には、仲介手数料などの費用や譲渡所得税などの税金が発生するため、資金計画もしっかり検討しておきましょう。

 

売却における全体の流れやお金のことを事前に把握しておけば、マンション売却をスムーズに進められます。今回ご紹介した内容を参考に、後悔のないマンション売却をかなえましょう。