都会の空を独り占めするような眺望や、ホテルライクな共用施設。高級タワマンでの暮らしはやはり特別です。しかし、実際に住んでみると「内装が好みに合わない」「もっと自分らしい空間にしたい」という想いが芽生えることもあるでしょう。

 

そこで気になるのが、タワマンはどこまでリノベーションできるのか、費用はいくらかかるのかといった点です。この記事では、タワマンリノベーションでできること/できないことや費用相場、注意すべきポイントなどについて詳しく解説します。

高級タワマンリノベーションでできること・できないこと


高級タワマンというと、どうしても特別なイメージを抱いてしまいがちですが、通常のマンションと同様、リノベーションすること自体はできます。ただし、できることとできないことがあるため、事前に把握しておきましょう。

高級タワマンリノベーションでできること

高級タワマンであっても、自分で所有している専有部分の範囲内であれば、リノベーションは可能です。ここで確認しておきたいのが建物の構造です。マンションの構造は、大きく次の2種類に分かれます。

 

  • ラーメン構造:柱と梁の枠組みで建物を支える構造。壊せる壁が多く、間取り変更の自由度が比較的高い。

  • 壁式構造:壁そのもので建物を支える構造。壊せない耐力壁が多く、間取り変更に制約が生じやすい。

 

高級タワマンは基本的に「ラーメン構造」で建てられています。さらに、タワマンは建物自体を軽量化するために、住戸内の壁がコンクリートではなく、軽量鉄骨と石膏ボードでできた「乾式壁」になっているケースがほとんど。そのため、一般的な鉄筋コンクリート造のマンションに比べて壊せる壁が多く、間取り変更の自由度は高いといえます。

 

もちろん、壁紙や天井の張り替えなどの内装変更は問題ありません。キッチンやバスルームの設備交換、室内の建具の交換、コンセント増設なども原則問題なく実施できます。上質な建材や設備を使って、ホテルのスイートルームのような贅沢な空間にすることも夢ではないでしょう。

高級タワマンリノベーションで制約がかかること

自由度が高いとはいえ、タワマン特有の事情でリノベーション内容に制約が生じることもあります。特に、水まわりの移設と床材の変更には注意が必要です。

 

まず、水まわりの移設についてです。ほとんどのタワマンは、床とスラブの間に空間がある二重床構造となっています。空間に配管や配線を通せるため、直床構造に比べればキッチンやトイレの位置を動かしやすいといえます。

 

しかし、排水管にはスムーズに流すための勾配が必要です。排水は共用部のパイプスペースへ流れるため、排水管が長くなるほど床下の高さが必要になります。スペースが足りなければ、移動を諦めるか、配管を通すために床の一部のみを上げるといった工夫が必要になるでしょう。

 

床材選びも一筋縄にはいきません。多くのタワマンで、騒音防止のために床材の遮音性に関する基準が設けられています。「無垢材や天然石を使用したい」と希望しても、遮音性能が基準を満たさないと使用できません。その場合、特殊な遮音下地を入れるなどの対策が必要となり、コストや天井高に影響する可能性があります。

高級タワマンリノベーションでできないこと

住民が手を加えられるのは「専有部分」のみです。玄関ドアの外側や窓サッシ、バルコニーなどは共用部分のため、個人が勝手に手を加えることはできません。パイプスペースも共用部分なので、水まわりを移設する目的で位置を変更するといった行為もNGです。

 

さらに、タワマン特有の事情として「スプリンクラー」があります。消防法により11階以上の住戸には原則スプリンクラーの設置が義務付けられていますが、タワーマンションでは建物全体の防災性能を維持するため、低層階も含めて設置されているケースも少なくありません。スプリンクラー用の配管が天井裏を通っているため、移設が難しい場合は間取り変更に制約が出るでしょう。

 

また、配管を隠す天井が必要になるので、スケルトン天井をデザインに取り入れるのは難しいといえます。

 

高級タワマンリノベーションの費用相場と期間の目安


一般的に、高級タワマンのリノベーションは通常よりコストが高くなり、工期も長くなる傾向にあります。高級タワマンをフルリノベーションする費用の目安は「1㎡あたり30万円以上」です。

 

標準的な70㎡の部屋で「2,100万円前後」、ゆとりのある100㎡の部屋だと「3,000万円以上」かかる計算になります。上質な天然素材や海外製キッチン、高機能設備などを採用する前提だと、これだけの費用がかかるのです。

 

設備や素材のグレードを落とした場合でも、1,000万円以上の予算は見込んでおくべきでしょう。タワマンは資材搬入や養生に手間がかかるうえ、職人の移動や管理規約による制約も多く、工事本体以外の経費がかさみやすいからです。

 

工期については、フルリノベーションの場合、着工から完成まで「3〜6ヶ月程度」が目安となります。タワマンは、工事可能時間や搬入出ルート、エレベーター使用時間などが指定されるケースが多く、一日の作業量が限られることもしばしば。そのため、通常のマンションより工期が長引きやすいのです。


高級タワマンリノベーションで意識したい4つのポイント


実際にリノベーションを計画するにあたっては、高級タワマンならではの注意点もあります。ここでは、タワマンリノベーションを成功させるために知っておきたい4つのポイントを紹介します。

(1)事前に管理規約をチェックしておく

タワマンに限らず、マンションには住民全員が守るべきルールを定めた管理規約があります。リノベーション時には、管理規約の内容を事前にチェックしておくことが欠かせません。

 

例えば、フローリングの遮音性に関する制限、工事時間帯や工事内容に関する制限などは、管理規約でよく見られる項目です。

 

これらを確認せずに進めると、プランが承認されず、工事を始められないおそれがあります。自分たちで規約に目を通すのはもちろん、リノベーション会社の担当者に依頼し、プロの視点で漏れなくチェックしてもらうと安心です。

(2)セキュリティ面に注意する

高級タワマンの魅力である厳重なセキュリティですが、工事の際にはハードルとなることがあります。

 

高級タワマンでよくあるコンシェルジュ常駐の物件などでは、工事業者の出入りチェックがとても厳格です。専用の入館証や身分証提示が求められ、工事車両の駐車も事前予約制というケースが少なくありません。

 

そのため、出入りする職人の氏名や車両ナンバーなどを、事前に管理室へ漏れなく届け出る必要があります。申請の不備で作業がストップしてしまわないよう、リノベーション会社と連携して手続きを確実に済ませておきましょう。

(3)近隣への挨拶をしておく

タワマンでのリノベーション工事中は騒音や振動、粉塵などが発生します。特に解体時の音や振動は周囲に響きやすく、近隣住民にとって大きなストレスになる可能性があります。

 

タワマンは世帯数が多く、近所付き合いが希薄になりがちですが、だからこそ工事前の丁寧な挨拶を心がけたいところ。着工前に、両隣と上下階の住戸へ挨拶に行くことをおすすめします。簡単な手土産を持参し、工事期間や音・振動の出やすいタイミングを伝えておくと、近隣住民の印象がよくなるでしょう。

 

工事内容の説明は専門的になるため、リノベーション会社の担当者に同行してもらうのがおすすめです。誠意ある対応が、近隣住民との信頼関係構築につながります。

(4)スケジュールは余裕を見ておく

先述のとおり、タワマンのリノベーションは工期が長くなりがちです。

 

というのも、タワマンは世帯数が多いので、工事業者が使えるエレベーターや使用可能時間帯が厳格に制限されているケースが一般的。資材の搬入出や職人の移動に時間がかかるので、実質的な作業時間が短くなってしまうのです。

 

また、大型の設備や建材がエレベーターに乗らず、階段搬入やクレーン吊り上げが必要になることも。高層階になるとクレーン搬入自体が困難なため、予定していた設備や建材を使用できなくなる可能性もあるでしょう。設計段階から、エレベーターの寸法と搬入可能な最大サイズをしっかり確認しておく必要があります。

 

こうした予期せぬ事態を見越して、引越しや仮住まいのスケジュールには十分な余裕を見ておきたいところです。

 

まとめ

高級タワマンであっても、専有部分であればリノベーションはできます。内装や間取りの変更は比較的自由にできるので、理想の住まいを目指してプランを検討してみてもよいでしょう。

 

ただし、管理規約の厳しさや搬入出の難しさなど、通常のマンションとは異なるハードルもあります。リノベーションを成功させるには、経験豊富なリノベーション会社に相談し、焦らずじっくりとプランを練ることが大切です。