住宅を購入する場合、ほとんどの人が加入するのが火災保険です。その名のとおり、火災をはじめとした万が一の事態から大切な自宅を守るために加入するものですが、何を基準に選べばいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、火災保険選びに際して考えるべき5つの項目を解説します。この記事を読めば、火災保険の選び方が理解できるでしょう。

火災保険とはどんなもの?

そもそも火災保険とはどのようなものなのでしょうか。火災保険とは、火災などが原因で自宅の建物や家財に被害が生じた場合、その損害を補償してくれる保険です。

「火災」と名前がついていますが補償対象は火災に限らず、風災、水害・土砂災害、落雷といった自然災害のほか、盗難による被害なども含まれます。また、自宅に生じた損害だけでなく、周囲の建物に与えた損害、跡地の後片付けにかかった費用などの補償が付く商品もあります。

住宅ローンの融資の要件として火災保険への加入を求めている金融機関も多く、住宅ローンを利用して購入した人は、大半が火災保険に加入しているはずです。

なお、地震や津波、噴火によって生じた損害は火災保険の補償対象外となっています。大規模災害は広範囲にわたって被害が生じるため、民間の保険会社のみで対応するのが難しいためです。これらの災害に対して備えるためには、セットで地震保険に加入する必要があります。


(1)補償対象はどこまでにするか

それでは、本題の火災保険の選び方について見ていきましょう。考えるべき5つのことを順番に紹介します。

1点目は、補償対象をどこまでにするかということです。火災保険は建物だけでなく、家財の補償も受けられます。家財とは、冷蔵庫やテレビなどの家電類、パソコン、テーブルやソファなどの家具類、生活雑貨や日用品、洋服、自転車など、家のなかにある財産一式のこと。ただし、どこまでを補償対象に含むかは保険会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

補償対象は「建物のみ」「建物+家財」「家財のみ」から選べます。戸建てでは建物のみでも一定の補償を受けることは可能ですが、家財を買い換えるには莫大な費用がかかるため、家財も含めた補償にしたほうがリスクを低減できるでしょう。

マンションの場合、エントランスや廊下といった共用部、建物本体の構造部に関しては、管理組合などで一括して火災保険に加入するのが一般的です。個人で加入するのは専有部に対する保険となるので、補償範囲を十分にチェックしておきましょう。


(2)補償範囲と任意補償をどうするか

火災保険の補償範囲には「基本補償」と「任意補償(オプション補償)」があります。

基本補償は保険内容のベースになるものであり、もとの保険料の範囲内で補償を受けられる反面、ここに含まれる内容を削除して保険料を下げるといったことはできません。火災・落雷・爆発・風災などへの一定の補償を、基本補償として定めている保険会社が多くなっています。

これに対し「任意補償(オプション補償)」は、基本補償に上乗せする形で受けられる補償内容であり、任意補償のメニューを増やすほど保険料が高くなります。水災(水害や土砂災害など)・水漏れ・盗難・破損などは任意補償とするのが一般的です。

任意補償をつければつけるほど安心感は高まりますが、その分保険料が際限なく高くなってしまいます。自宅のあるエリアの特性を踏まえ、必要性の高いオプションを追加するようにしましょう。たとえば、川や山が近いエリアでは水害や土砂災害のリスクが高いので水災への補償を付ける、犯罪発生件数の多いエリアでは家財を守るために盗難の補償を付けるといった具合です。

また、建物や家財の補償以外にかかる費用に対しては「費用保険金」が設定されています。費用保険金の設定は保険会社によって異なるため、任意補償と合わせて内容を確認し、必要なものを選択しましょう。


(3)建物と家財の保険金額をいくらにするか

保険イメージ

続いて、建物と家財それぞれの保険金額を設定します。保険金額は保険によって補償を受けられる限度額のことであり、いざというときに必要な分を保証してもらえるよう、適切に設定することが重要です。

建物の保険金額はこうして考える

建物の保険金額は、補償対象の建物の評価額(保険価格)をもとにして決まります。建物の保険価格を計算するにあたっては「新価」「時価」という2つの考え方があります。

  • 新価(再調達価格):同じ建物を新築で建て直すのにかかる費用相当の金額

  • 時価:経年によって減少した価値を差し引いた、現時点での資産価値相当の金額

新価より時価のほうが安いので、時価で保険価格を設定したほうが保険料を低くすることが可能です。しかし、損害状況によっては建て直しや大規模な修繕が必要となるケースもあり、時価をベースに計算した保険金額ではまかない切れないかもしれません。

そのため、通常は再調達価格を保険価格とし、保険金額も再調達価格と同額にします。

家財の保険金額はこうして考える

家財の保険金額は比較的自由に決められることが多いですが、評価額は家族人数や年齢によって大まかな目安があります。

たとえば、30歳前後の夫婦二人暮らしであれば700万円程度、40歳前後で子ども二人の四人暮らしであれば1,300万円程度が評価額の目安です。保険会社のWebサイトなどで簡易的な評価額の目安が見られるので、参考値としてチェックしてみるといいでしょう。

とはいえ、評価額いっぱいで保険金額を設定すると保険料が高くなってしまいます。家財に損害があった際、補償が必要なアイテムをリストアップし、保険料とのバランスで保険金額を設定するのがおすすめです。

家財の保険金額を決めるときには「明記物件」にも注意が必要です。明記物件とは、貴金属類、アート、骨董品など、1点もしくは1組で30万円を超える家財のことをいいます。明記物件は、あらかじめ保険証券に記載しておかないと補償を受けられないリスクがあるため、必ず事前に申告しておきましょう。


(4)地震保険に加入するか

火災保険の内容が決まったら、セットで地震保険に加入するかどうか検討しましょう。

地震・津波・噴火によって生じた建物や家財の損害は、火災保険の補償対象外です。これらの災害による補償を受けるには、火災保険と併せて地震保険に加入しなければなりません。地震保険は単独で加入することができず、必ず火災保険とセットで加入します。

地震保険の保険料は、対象物件のある地域の地震発生確率や建物構造などによって決まっており、保険会社ごとの差はありません。

日本で生活する限り、地震はどこでも起こり得ます。海岸の近くであれば津波の心配もあるでしょう。自己資金だけでは不安な人、地震によって収入がなくなる可能性がある人などは、いざというときに備えて地震保険にも加入しておきたいところです。

なお、火災保険の契約期間中なら、あとからでも地震保険に加入できます。


(5)契約期間をどうするか

契約期間イメージ

火災保険の契約期間は最長5年となっています。以前は10年でしたが、地球温暖化による気候変動で長期的な自然災害リスクが見通しづらくなっていることなどを背景に、2022年から短縮されました。

契約期間が長くなるほど、1年ごとの保険料は安くなる仕組みです。また、払込方法によっても保険料が異なります。月払いや年払いの設定もありますが、一括払いのほうがトータルの保険料を抑えられます。

今後最低でも5年はその家に住み続ける予定であり、かつ自己資金に余裕があるなら、できる限り最長の5年契約で一括払いにしたほうが、支出を抑えられるでしょう。


適切な火災保険を選んでいざというときに備えよう 

火災保険は、大切な自宅が火災や落雷などの被害に遭った際、損害に合わせた補償をしてくれる大切な保険です。住宅ローンを組むにあたって加入を求められる場合も多く、大半の人が火災保険へ加入することになるでしょう。

補償範囲に家財を入れるか、保険金額をいくらに設定するか、地震保険に加入するかなどによって保険料は変わってきます。どこまでの補償が必要かしっかり検討したうえ、保険料とのバランスで適切な火災保険を選びましょう。