和モダンの住宅は人気を集めていて、リノベーションでも取り入れられているケースが少なくありません。

しかし、実際に和モダンの雰囲気を考えていても、話に聞くだけでは具体的なイメージができないこととも思います。打ち合わせの時などは言葉に詰まることも、あるのではないでしょうか。

そこで、ここでは築45年の住宅を和モダンのリノベーションをした事例を紹介します。併せて、和モダンリノベーションの注意点なども解説しましょう。

リノベーション前の状態


まずは、この家のリノベーション前の状況を挙げてみましょう。

リノベーション前と後の間取りを参照して、お読みください。

日当たりが悪い

まず挙げられる点が日当たりの問題です。この家は住宅密集地に建てられた都合、日照条件は良くありませんでした。また、部屋が細かく仕切られているため、日差しが中に入りにくい状況もありました。

広い部屋は確かにあったのですが、土地の条件と間仕切りがあり、採光の面では不利です。

細かく仕切ってある部屋

この物件は部屋が細かく仕切ってあるため、オーナー様は使いにくさを感じていました。また、細かい仕切りのため、採光条件が悪いスペースもありました。使っていなかった部屋もあり、少なからずムダを感じていたのです。

耐震性に不安

この家は築45年で、耐震性から言えば旧耐震となります。これは現在の耐震基準よりも格段に下の基準。そのため、大型地震が発生すると、倒壊の危険性すらあるのです。

ちなみに、旧耐震の基準は震度5程度ならば耐えられるものの、それを上回るレベルの地震では倒壊などの危険性が伴います。ですから、最近になって見られる震度7レベルの地震では倒壊まで考えられます。安全面で不安が残るのです。


この物件のリノベーション

次に、この住宅のリノベーションの特徴を取り上げましょう。

リビングダイニングキッチン

リビングダイニングキッチンは和風のスペースと洋風のリビングを組み合わせです。

以前は襖で仕切っていましたが、その仕切りをオープンに変えています。

和のスペースからは洋の部分が目に入り、また洋の部分からは和の部分が見える間取り。

これによって、見事に雰囲気の融合がなされています。


玄関まわり

玄関からは和室スペースがダイレクトに見え、広々とした視界が確保されています。これは、玄関と和室の仕切りをガラス戸にしているためです。和の雰囲気が視界に入るようにする演出と言えるでしょう。

また、玄関まわりの素材は木を多用して、モダンながらも柔らかい雰囲気を醸し出しています。


板張り天井

天井は目に入りにくいようでいて、意外と視界に入るものです。そのため、天井材をどのようにするかがリノベーションのポイントともなります。

さて、こちらの住宅の天井は板張りです。フロア材との一体感が保てるので、部屋全体のデザインを統一しています。

格子の工夫

木製の格子を間仕切りとして組み込んでいるのも特徴的です。

間仕切りは部屋の仕切りとして大切ですが、襖のように完全に仕切ると部屋が暗くなってしまいます。

その点、格子はシースルーのため、採光にはあまり影響しません。

ちなみに、この格子にも木を使っています。柔らかく、優しい感じに仕上がっています。

照明器

照明器は種類と高さが重要です。

この住宅ではペンダントライトに和風のタイプを採用。天井にはダウンライトを設置し、部屋全体が明るくなるように設計しています。また、天井の木のテイストも明るく視界に入り、雰囲気は心地よいです。

尚、明るさは照明器だけで演出するのではありません。天井材や壁材など、素材の色彩や質感などのトータルで決まります。この住宅は素材まで選んでいるので、明るさにこだわった家と言えるでしょう。


和モダンリノベーションの注意点

冒頭にも挙げたように、和モダンのリノベーションは流行です。

しかし、和モダンもデザインを間違えると、せっかくの雰囲気が台無しになってしまいます。

そこで、ここでは和モダンリノベーションをする際の注意点を取り上げます。

あくまでも雰囲気の融合であること

和モダンと聞くと「和室と洋室の組み合わせなんだな」と解釈され、単に和室と洋室の組み合わせとするケースが少なからずあります。しかし、それは単なる部屋の組み合わせであって、和モダンとは言いにくいです。

和モダンとは和の素材・テイストと洋の素材・テイストを融合させたもの。あくまでも雰囲気の融合なのです。

例えば、前述の住宅であれば洋室に掘りごたつの雰囲気のテーブルを設けています。これによって洋の部屋に和の要素をトッピングして雰囲気の融合を図っています。

和に偏り過ぎないように

和モダンとなりますと、和の比率と洋の比率がズレてしまって、チグハグになってしまうケースがあります。

特に、和に偏ってしまう傾向が強い様子です。洋のエッセンスに欠けてしまい、洋風の和室になってしまった感じです。

そのため、和モダンは「和に偏り過ぎない」点も大きなポイントとなるでしょう。

具体的な比率はケースバイケースとなりますが、和と洋は同等レベルがおすすめです。

ただし、和室と洋室を組み合わせるのでありません。和の要素を加えた洋の空間、洋の要素を加えた和の空間を同等レベルにする程度が良いでしょう。

統一感を持たせる

統一感を持たせる点も重要です。

単純に和と洋を組み合わせると、双方に違和感が生じてしまいます。そうなると、せっかくの雰囲気作りが台無しになるのです。

例えば、シャープな雰囲気の和の雰囲気と柔らかい洋の雰囲気をブレンドさせたらどうなるでしょうか。…不協和音を感じるかも知れません。

しかし、柔らかい和と柔らかい洋を組み合わせれば、全体が柔らかくなります。統一感ができるのです。

尚、その場合は照明器にも気を付けなければいけません。雰囲気に合わせて光の色を調整すべきでしょう。

自然素材の活用がベター

和モダンの雰囲気を作るためには自然素材を活用するのがおすすめです。

和モダンはあくまでも「モダン」であって、「未来的」とはニュアンスが異なるからです。

未来的な素材としては金属やプラスチック素材です。シャープな形状を持たせると更に未来的になります。

しかし、木のような自然素材であれば未来的にはなりません。モダンの域に留まるのです。

ただし、住宅には金属部品がどうしても必要な部分はあります。そのような場合は、塗装で周囲の色に合わせれば、周囲に溶け込ませることが可能です。色調に気を付けましょう。


住宅の基本性能について

先に挙げた住宅は築45年で、耐震性などは古いままでした。また、耐風圧も今の住宅ほどは無かったかも知れません。大地震や大型台風が襲来すると、非常に危険な事態になると思われます。

さて、リノベーションをする家は古い場合が多いです。そのため、安全のため、性能の確保をしなければいけません。構造部分の補強も重要です。リノベーションの際には構造をチェックし、十分な補強を行いましょう。


まとめ

和モダンのリノベーションについて、事例を挙げて解説しました。築年数が経った家でもリノベーションが可能であること。しかも、流行の住宅への改装も可能であることが把握できたものと思います。

また、和モダンにする際の注意点も挙げました。和モダンは単なる和室と洋室の組み合わせではないことを理解できたものと思います。

いずれにしても、和モダンのリノベーションは古い住宅であっても可能です。住宅を改装するのであれば、和モダンにするリノベーションを検討してはいかがでしょうか。