家事が楽になる動線のリノベーション解説
リノベーションは住宅をきれいにするだけでは不十分です。やはり「便利さ」を追求したいもの。そのためには「人の動き」を意識しなければいけません。このときのポイントは「家事労働の効率化」です。
ところで、労働を考える時に重要な点が「動線」であることをご存じでしょうか。
実は、住宅設備の機能も重要なのですが、「人の動き」もそれと同様に大切なのです。
そこで、この記事では家事が楽になる動線を考慮したリノベーションについて解説します。
動線を優先するリノベーションのコツ
まずは、動線を優先するリノベーションのコツを紹介します。
LDKを中心とした間取りにする
昔の住宅は居間とキッチンが分かれていました。そのため、居間とキッチンの往復が多くなり、非効率的でした。
さて、家事動線を重視するならば、この移動を極力少なくしなければいけません。
その点、LDKを中心とした間取りであれば、キッチンとダイニングの行き来が楽になり、効率化が図れます。
動きの中心となるポイントを絞る
生活動線を考えるならば「動きの中心となるポイント」を絞る方がベターです。そして、中心とすべきなのはキッチンが適当でしょう。
と言うのも、キッチンを動きの中心とするならば、炊事と洗濯が同時にしやすいので効率が上がるからです。
また、LDKであれば、リビングから浴室への移動もしやすいです。家事労働だけでなく、生活もしやすくなるでしょう。
移動距離は短くする
移動距離を短くすれば「歩数」も少なくなるので、家事の効率も上がります。動線を意識するならば、この点も注意すべきです。
例えば、歩幅を70cm程度と仮定すれば、2m進むのに3歩程度、3m進むのに4歩程度が必要です。この時の違いは1歩かもしれませんが、往復の回数を考えるならば相当に違います。
更に、1歩の違いの時間を計るならば、移動に必要な時間の差も相当であることが分かるでしょう。
そして、その差の分だけ効率が上がるのです。
行き止まりは作らない
行き止まりを作らないのも家事動線を良好にする大きなポイントです。
と言うのも、行き止まりを作ると「戻る動作」が必要となり、その分だけ歩数が掛かってしまいます。当然ながら、歩数のロスはそれだけ効率が落ちます。
しかし、行き止まりを作らなければ、このようなロスは発生しません。家事の効率も上がるのです。
LDKのリノベーション
それでは、具体的なリノベーションはどのようにすべきなのでしょうか。
ここでは、LDKのリノベーションについて紹介します。
通路の確保
まず挙げられる点が「歩数の節約」で、ポイントとなるのが「通路の確保」でしょう。
仮に、通路が確保できない場合には、歩数のロスが出てしまい、家事が非効率的になります。これは動線を考える上でマイナスです。
しかし、通路が確保されていれば、歩数のロスは発生しにくく、家事の効率も上がります。より良い動線となるのです。
具体的には、通路を左右の2方向に設けることが必要です。イメージ的には右から入って作業をして、左から出て来る動きです。アイランド型のキッチンはこの点において優秀と言えるでしょう。
方向転換をしない配置
家事動線を考えるならば、方向転換をしない配置が理想的です。「振り返る動作」がロスに繋がるからです。
例えば、壁付けのキッチンであれば、リビングに移動する際に、方向転換をしなければいけません。
また、家族の動きを確認する場合でも、その都度後ろを見る必要があります。これはロスです。
しかし、方向転換をしない配置であれば、このようなロスが発生しません。より良い動線となるのです。
キッチンとダイニングは適度な距離に
家事労働の効率に「歩数」が関係するならば、キッチンとダイニングの距離は重要です。あまり離してしまうと、配膳などに時間が掛かり、動線の点で不利となります。やはり、近い方が有利です。
しかし、あまりにも近すぎると落ち着かないかも知れません。そのため、距離は作業効率を落とさない程度の「適度さ」を考えることが重要となるでしょう。
冷蔵庫の位置に気を付ける
キッチンを考える時に意外に盲点となるのが「冷蔵庫の位置」です。冷蔵庫は基本的には壁付けになるので、行き止まりを作りやすいのです。
また、アイランド型のキッチンを設置した場合でも、配置を間違うと方向転換の必要が生じます。
そのため、冷蔵庫はキッチンの背面に設置するのではなく、横の部分に配置するのがおすすめです。横に配置すれば180°の方向転換までは必要ありません。動線を変えることなく、家族を見守りながら炊事ができるのです。
水まわり設備のリノベーション
次に、水まわり設備のリノベーションを取り上げます。
設備は集約する
前述の通り、歩数と方向転換は動線を考える上でロスになる要因です。
そのため、水まわり設備も配置を考えなければいけません。まずは設備の集約が必要となるでしょう。
ただし、水まわり設備は世帯によってケースバイケースです。ある家は浴室乾燥をメインにしている一方で、物干し場を使っている例もあるからです。
しかし、リノベーションで物干しスペースを設置するならば、物干し場を含めた集約も可能です。この場合には間取りも関係するので、設計段階から打ち合わせておくと良いでしょう。
キッチンとの距離に気を付ける
前述のように、家全体の動線を考えるならば、キッチンを中心と考えるべきです。
そのため、洗濯機を中心とした水まわり設備のキッチンからの距離を縮めることが、家事の効率化のポイントとなるでしょう。
例えば、ダイニングで炊事をしながら洗濯をする時など、距離が短ければ歩数の短縮に繋がり、それだけ効率が上がります。そして、それだけ時間が短縮されるのです。
掃除を考慮したリノベーション
次に、掃除について取り上げましょう。
掃除は基本的には家全体に及ぶため、掃除用具の運搬と、置き場の配置が効率化のカギとなります。
ちなみに、掃除の際は掃除機の運搬を前提にすべきです。掃除機の重量も視野に入れながらの間取り設計が、重要な点になるでしょう。
段差は無い方がベター
まず挙げられる点が「段差を無くす」ことです。
これは、掃除機の運搬を考慮してのこと。今の掃除機は昔のものよりも軽くはなりましたが、それでも3kgを超えるケースが珍しくありません。そして、この重量を家の隅々まで持ち歩くのは大変です。特に、主婦が掃除をするときには大変なことでしょう。
しかも、段差があれば、掃除機を「持ち上げ」なければいけません。重さ3㎏を超える掃除機を持ち上げるのは、やはり大変です。
しかし、段差が無ければ、そのような仕事が軽減されます。効率化が図れるのです。
掃除用具の収納に気を付ける
掃除用具の収納場所も重要です。
仮に、家の端に置くならば、他の位置までの運搬に手間が取られるため、効率が悪くなってしまいます。
しかし、ある程度にしろ、中央に近い場所に収納するならば、家の隅まで行きやすくなります。
それだけ効率が上がります。動線を考えるならば、おすすめです。
まとめ
家事動線を考慮したリノベーションについて取り上げました。
リノベーションは間取りを変えることが可能なので、フレキシブルな設計が可能です。しかし、家事動線を考えるならば「人の動き」まで考慮しなければいけません。
可能な限り、無駄な動きを排除して、より効率的な動線のリノベーションとしましょう。