日常生活において「どのような動きをするか」という点は意外なほどに大切です。例えば、財布などの置き場を変えた場合、戸惑うことは少なくないと思います。

この現象は「生活動線を変えた」ことが原因の1つと考えられます。毎日の動線を急に変えたために動作にロスが生じたとも言えるのです。

さて、玄関まわりも生活動線が非常に重要な地点です。そのため、生活動線を効率的に動けるようにすることが良い家づくりに繋がります。

そこで、ここでは玄関まわりの動線設計について、効率的にするためのポイントを紹介しましょう。

玄関に欲しいアイテム

玄関では動線の工夫も大切なのですが、効率的になるアイテムがあった方がベターです。

ここでは代表的となるアイテムを取り上げて解説します。

シューズクローク

シューズクローク イメージ

今のシューズクロークは非常に機能的なので、動線の効率化にはぜひとも欲しいアイテムです。

と言うのも、シューズクロークは単なる下駄箱とは違い、ブーツや傘などの収納も効率的になるからです。

リノベーションで生活動線にシュークロークを組み込むならば、スムーズに靴を出し入れできるようになります。素早い動きが可能となるのです。

手洗い場

手洗い場 イメージ

手洗い場も玄関に欲しいアイテムです。

特に、インフルエンザや新型コロナのような疾患を懸念するならば、一層必要性を感じることと思います。

また、来客の際にも必要なアイテムとも言えます。衛生の意識の高い人が来訪した場合、印象を落としてしまうからです。

いずれせよ、手洗い場も欲しいアイテム。リノベーションで生活動線に組み込むならば、衛生的になるのです。

鏡 イメージ

鏡も玄関に欲しいアイテムです。

これは身だしなみ確認のため。出かける直前に最後の確認をするためです。

身支度をする際には洗面台やドレッサーなどの鏡で確認するでしょうが、最終確認をした方がベターでしょう。そのためにも玄関に鏡が必要なのです。

その他

その他にも、小物入れなどがあると便利です。

入れるものはマスクなどの出かける際に使うもの、そして宅配便受け取り用の印鑑などのように玄関先で使うものです。


動線設計のポイント

次に動線設計のポイントを取り上げましょう。

回遊動線にする

生活動線は「行ったり来たり」ではロスが多くなってしまいます。方向転換は無駄な動きです。

その点、回遊する動線とすれば「行ったり来たり」をすることがありません。方向転換がなくなって動作にも無駄がなくなるのです。

ただし、回遊は方向性を決めた方がベターです。右に行く場合と左に行く場合を混同させてしまったら、余計な動きが発生してしまいます。余計な動きは時間の無駄にも繋がるので、方向性は統一しましょう。

ショートカットを可能にする

回遊すればスムーズに動くのですが、遠回りをする必要まではありません。省けるときはショートカットするべきです。

例えば、開口部分を広めに取ればショートカットが可能ですし、鏡や小物入れなどのアイテムを大きくすれば、複数人で使うことができるので能率が上がります。

ただし、ショートカットを増やし過ぎると混乱を招く場合が考えられるので、多くはしない方が無難です。

手を伸ばせば届くようにする

動線をスムーズにするためには、なるべく身体の移動を少なくすることが大切です。移動をすると動線がジグザグになり、効率が落ちるからです。

そのため、「物を取るための動作」は極力手を伸ばせば取れるようにします。距離的には片手を伸ばして届く範囲がベターでしょう。

手洗いをしやすいように

前述のように、手洗い場はぜひとも欲しいアイテムです。

設置場所は動線を崩さない位置にすることがポイントとなるでしょう。

なお、手洗いは来客も想定すべきです。来訪者の動線も考えて、スムーズに手を洗えるようにしましょう。

インナーガレージと玄関ホールを繋げる

車をインナーガレージに駐車するのであれば、玄関ホールを繋げると動線が短くなります。

また、インナーガレージと玄関ホールが繋がっているのであれば、雨天時には濡れなくて済むので便利です。

ポイントはインナーガレージと玄関の開口部の大きさです。荷物の運搬も想定して、ある程度の大きさは確保しましょう。

ベビーカーなどを置けるように

赤ちゃんのいる世帯ではベビーカーを置くことも考えるべきでしょう。

ただ、ベビーカーを置く場合にはベビーカーの置き場だけの確保では不十分です。赤ちゃんを乗せる作業に困らない余裕が必要だからです。スペースは十分に取りましょう。

キッチンに行きやすいように

玄関からキッチンに行きやすくすることもポイントとなります。

これは食材を買って帰って来た場合を考えての配慮です。食材は時には重くなるもの。少しでも距離が短いと家事労働が楽になります。

鏡は1人で使うよりも複数人で使用することを想定するべきでしょう。これは、朝に使う人が重なる場合があるからです。ですから、大きな鏡にするか複数枚用意する方がベターです。

また、鏡は置き場所もポイント。置き場所を誤ってしまうと動線が乱れてしまう場合もあります。鏡の位置は朝の「人の動き」を意識して決めましょう。

手すり

手すりを生活動線に入れることは家族の安全確保のために重要です。

特に、小さい子供やお年寄りのいる世帯では必要となります。

さて、手すりのポイントは設置高さと位置です。使う人に合わせて補助手すりも併せて使うようにしましょう。

また、小さい子供のいる住宅では、転落防止の処置も必要です。格子を組み合わせて手すりを作るとベターです。

スロープ

お年寄りのいる世帯ではスロープも動線に入れるべきでしょう。

ただし、スロープは動線よりも安全性を優先させなければいけません。動線が他と拮抗するならば、敢えて他に譲って、安全を取ることも必要と思われます。

なお、スロープはベビーカーも使います。小さな子供が歩く場合も多いので、スロープからの転落防止柵があった方がベターです。

車いすを使いやすいように

バリアフリーを考えるのであれば、玄関は車いすの使用まで検討して設計するべきです。

さて、車いすの動線を設計に組み込むためには、車いすの大きさと動き、そして介助者の入るスペースまで検討する必要があります。

また、車いすで家に入るならば、玄関ホールと廊下の動線にも気を付けなければいけません。車いすの幅だけでなく、方向転換する場合の余裕も計算に入れて玄関を設計することが重要です。


動線の優先順位について

ここまで動線設計のポイントを紹介しましたが、時には複数の動線が絡んでしまうこともあると思います。

例えば、ベビーカーの使用と車いすの使用が拮抗した場合です。

このような場合は優先順位を考えて動線設計をすると良いでしょう。ベビーカーと車いすの例では使用頻度の差で優先順位が決められますし、将来を考えても順位が決まります。

ただし、動線と安全性が拮抗する場合には安全性を優先するべきです。スピードを求めるあまりにケガをしては良くありません。あくまでも「安全第一」と考えましょう。


まとめ

玄関まわりの動線設計について取り上げました。

玄関に欲しいアイテムから動線設計のポイントまでイメージが掴めたことだと思います。

また、動線以上に安全性も重要視されなければいけないことも再確認できたことでしょう。

朝にしても夕方にしても、玄関はとかく忙しい場所になりがちです。安全性を確保しながらスムーズに動かすことが必要です。家族に合わせて、多角的に設計を考えましょう。