リノベーションを決める上で重要な点はいくつもあります。

設備の利便性、内装の美しさ、工事全体の経済性など、リノベーション工事の後にも影響する要素は多彩です。

ところで「ファザード」という言葉をご存じでしょうか。

あまり聞きなれない言葉かも知れませんが、リノベーションを左右し得る重要な要素です。

そこで、ここではファザードについて、その意味や役割を紹介します。

ファザードとは何か

ファザードとは何か イメージ

まずはファザードとは何かを解説しましょう。

ファザードの意味

ファザードとはフランス語から来た言葉で「建物を正面から見た時の外観」を指します。

建物においては正面の外観はその建物の印象を決める非常に重要な部分です。そのため、その部分には個性的なデザインが使われたり、凝った素材などが用いられたりします。

例えば、玄関まわりに凝った外壁材を使ったり、カラーリングを変えたりするケースが見られますが、それなどはファザードを意識した家づくりと言えるでしょう。

ただし、ファザードはその建物の個性の表現だけではありません。周囲にも影響するので、街の景観への調和も計算に入れられます。

機能面の保護

ファザードは建物の印象を決めるだけでなく、機能面の保護の役割も負っています。

例えば、断熱性や遮音性などです。

これらは建物の内部環境維持に関係する部分です。実際の住み心地にも関係するので性能が求められます。

そのため、単なるデザイン性の追求だけでなく、構造や素材の工夫もされます。これらの工夫を通して、優れた性能の家が生み出されているのです。


ファザードの役割について

ファザードの役割について イメージ

次にファザードの役割を挙げてみましょう。

建物の印象を決める

建物の印象を決めることはファザードの大きな役割と言えます。

建物への印象は第一印象によってほとんど決まってしまい、その印象は簡単には変わりません。ファザードは建物の正面の外観です。第一印象を決める役割を担うのです。

ちなみに、建物の印象は生活する人の印象にも影響し得ます。「家をきれいにしている人」という印象は、その後の人間関係にも作用するかも知れません。

個性の表現

個性の表現もファザードの役割の1つです。

戸建て住宅の場合、街の景観は重要視されますが、それと同様にオリジナリティも要求されます。住宅それぞれが個性を持つことによって、街に変化が生まれ、魅力的になるからです。

そのため、建物の正面には個性が求められます。ファザードの個性の表現は、街の景観の面白さにも関係する重要な要素なのです。

住宅の保護

住宅の保護もファザードの重要な役割です。

良い例が防犯性の確保。時として侵入者は大胆不敵にも真正面から攻めて来ます。その場合、建物正面部分の架空開口部は鉄壁の防犯性能を持っていなければいけません。そのような背景を受けてファザードは強化されるのです。

また、最近ではゲリラ豪雨をはじめとする水害が世間を震撼させました。それに伴って建材メーカーは水害対策の商品を開発したのですが、これなどもファザードの強化と言えそうです。


ファザードのデザインのポイント

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前にも述べたように、ファザードは建物の印象を付ける部分です。

そのために必要なのは、やはりデザインとなるでしょう。

それではオリジナリティを前面に出すデザインのポイントにはどのような要素があるのでしょうか。

建物外観の形状

「形状」は印象を付けるのに非常に重要な要素と言えます。建築物もその点は同様です。形状はデザインのポイントなのです。

例えば、屋根形状が緩い家の中に急勾配の屋根の家があったらどうでしょうか。その家は多くの人に印象を与えることでしょう。そして、その急勾配が個性を出しながらも均整の取れた形状であればそうでしょうか。…人々に好印象を持たれるに違いありません。

ファザードはこのように形状によって変わります。形状のデザインは大きなポイントと言えるのです。

素材と色の工夫

素材と色はデザインにダイレクトに影響します。個性を大切にしながら厳選しなければいけません。

例えば、個性を求めるならば、スタッコなどを使う時には敢えて平坦に仕上げないなどの「主張」が必要になるでしょう。また、スタッコに顔料を混入しオリジナルの色調を作り出すのも良いでしょう。

いずれにせよ、オリジナリティは素材と色が関わります。工夫を凝らしてください。

玄関や窓の位置と大きさ

「プロポーション」は比率を意味します。

良い例が黄金比。一定の比率の比率が目に訴えます。

そのため、玄関や窓の位置と大きさは一定の比率を保つべきです。ファザードは前面ですので、特に目立ちます。印象にも関係するので、玄関や窓の大きさには注意を払いましょう。

なお、細かく言うならば、玄関や窓と建物の大きさ、あるいは門柱との高さ比率なども計算に入れた方がベターでしょう。

周囲との関連性

ファザードを考えるならば周囲との関連性も忘れてはいけません。

これは街の景観があるためです。個性を大切にすることは重要なのですが、それと同時に調和も必要なのです。

仮に、逆に突飛なデザインだったらどうでしょうか。例えば、ベージュの家が並んでいる街並みに、突然ショッキングピンクの家があったら…突飛過ぎて驚かれるかも知れません。

それどころか、周囲の家からクレームが来る可能性すらあります。

ちなみに、自治体によっては街の景観保護のために建物の色調に制限を設けているケースがあるとか。…役所からの命令が仮に来たら厄介かも知れません。

夜間への配慮

夜間は防犯の面で気を付けなければいけません。侵入者は夜間に攻めて来る場合があるからです。しかも、時として大胆不敵に正面からやって来ます。

そのため、ファザードには鉄壁の防犯性が求められます。不正解錠に強い玄関ドア、破られにくい窓なども必要条件となるでしょう。

ただし、建材は強度を求めると無骨なデザインになりがちです。デザインを選ぶのに苦労するかも知れません。

プライバシーを確保する

プライバシーの確保も非常に重要です。

ファザードは建物の外観を重要視するあまり、住む人のプライバシーを犠牲にされがちです。しかし、この状況は非常に危険です。プライバシーがなおざりにされると、その人がトラブルに巻き込まれるリスクが上がります。

そのため、プライバシーを守る上での工夫が必要です。

この具体例としては、窓に貼るプライバシー保護シートなどが挙げられるでしょう。外から見えなくするシートなので、プライバシーが守られます。

植栽を工夫すると面白くなる

植栽も大きなポイントと言えるでしょう。

と言うのも、建築部材の多くは無味乾燥なものが多いからです。植栽はその中に生命の息吹を吹き込むアイテム。優れた脇役なのです。

例えば、シンボルツリーなどは玄関先の印象を決める上で重要です。

ちなみに、ツリーには「適切な大きさ」があります。それは例えば玄関ドアとの比率、あるいは門扉などとの比率として決まるでしょう。ツリーの主張は調整されて好ましいファザードが決まるのです。


まとめ

ファザードについて取り上げました。

言葉の意味が再確認できた人、どのような役割を担うかを再認識できた人も多かったのではないでしょうか。また、住宅のリノベーションにも重要であると思った人も多かったことでしょう。

ともかくとして、住宅のリノベーションは住み心地と同様にオリジナリティなども表現すべきです。住宅の正面を再確認し、リノベーション案などを作るのも面白いのではないでしょうか。きっと楽しい面もあるはずです。