リノベーション工事をするに当たっては建築会社との打ち合わせが必須ですが、出て来る専門用語に困った人も多いのではないでしょうか。意味が分からない内に打ち合わせが進んでしまってヤキモキした人も多いことと思います。

ここで取り上げる「躯体」もそのような用語の1つ。リノベーション工事にはよく出る単語です。頻出なのに、その意味は意外を知られていません。

そこで、ここでは躯体について取り上げ、その種類とメリット・デメリットを中心に解説します。

躯体とは何か

躯体とは何か イメージ

まずは、躯体について解説しましょう。

躯体とは何か

躯体とは建物の基本的な構造部分を指した用語です。

例えば、木造建築物の場合は「柱」「梁」とのような基本構造部分となります。そのため、間仕切り壁やドア・窓などの建具は躯体には入りません。そのような製品は「躯体に付けるもの」です。

また、躯体の役割は建物に加わる外力の吸収。例えば、地震や台風などの外力を吸収して室内を安全に保つのも躯体です。

なお、躯体は素材によって種類が異なります。

躯体の重要性について

前述のように、建物に加わる外力は躯体で受けます。そのため、躯体の強度によって受けられる力が異なります。

良い例が耐震構造。昔の耐震基準では耐震強度がそれなりにしか決められていませんでしたが、今日の耐震強度は非常に高いです。つまり、古い基準の躯体よりも新しい躯体の方がより強度の高い躯体が必要とされるのです。

また、躯体の材質によっても特性が異なります。

後述しますが、木造の躯体はシロアリ被害に遭う場合があります。しかし、木造以外の構造は木ではないので、シロアリ被害は受けません。

躯体の種類

主な躯体の種類は次の通りです。構成する素材によって区分されます。

  • 木造躯体

  • 鉄筋コンクリート躯体

  • 鉄骨躯体

  • 鉄骨鉄筋コンクリート躯体

次の項からそれぞれの構造について紹介します。


木造躯体とは

木造躯体とは イメージ

ここでは木造躯体の特徴とメリット・デメリットを紹介します。

木造躯体の特徴

木造躯体は木材で組んだ構造体です。

木材は伝統的に使われて来た素材。非常にポピュラーに使われています。

木造躯体にも種類があります。主なものは次の通りです。

  • 木造軸組み工法(在来工法)

  • ツーバイフォー工法

  • 木造ラーメン構造

基本的には「柱・梁」のような部材で構成するもの、ツーバイフォー工法のような「面」で構成するものがあります。

ちなみに、木造は地震に弱いイメージがありますが、今日の木造は大きな地震が来ても問題はありません。というのも、今の木造住宅には2000年耐震の基準で建てられているからです。

木造躯体のメリット

木造躯体のメリットはコストが抑えられる点です。

住宅のグレードにもよりますが、安価なものであれば、他の構造の半額レベルにまで下がります。

また、火災に強いのもメリットです。

「木材は燃えるので火炎に弱い」と思われがちですが、実際に火災になると、燃えるのは表層部分ばかりで躯体部分までは燃えにくいです。その一方で鉄骨造には熱を受けると躯体が軟化して強度が保てなくなる、というケースもあります。

ちなみに、木造軸組み工法の住宅は日本で最もポピュラーな構造。中小の工務店でも対応が可能です。

木造躯体のデメリット

木造躯体のデメリットは耐用年数の短さやシロアリ被害に遭う点が挙げられます。

住宅の耐用年数は置かれた条件によって異なりますが、一応の耐用年数は法的に定められています。

この内、木造住宅の耐用年数は22年と他の構造に比べて短く、デメリットと言えるでしょう。

また、シロアリに関しては、躯体に防蟻剤を塗布することになっていますが、薬効の期間はそれほど長くはありません。そして、薬効が切れるとシロアリ被害のリスクは増加します。


鉄筋コンクリート躯体とは

次に、鉄筋コンクリート躯体の特徴とメリット・デメリットを紹介します。

鉄筋コンクリート躯体の特徴

鉄筋コンクリート躯体とは、コンクリートの中に鉄筋を埋設して構成する躯体です。

材料の特性として、コンクリートは圧縮に強く、鉄筋は引張に強いのですが、この2つを組み合わせて強度を確保しています。

鉄筋コンクリート躯体のメリット

鉄筋コンクリート躯体のメリットと言えば、構造部分の強度と防火性と言えます。

構造部分の強度は非常に高いです。実際、鉄筋コンクリート構造はビルにも使われているほど。使用するコンクリートにもよりますが、ビルの重量を支えている実績からすれば、強度はケタ違いと言えるでしょう。

また、コンクリートは無機質のため燃えません。そのため、防火性も非常に高いです。火災には隣家からの「もらい火」によるものもあるのですが、そもそも燃えない素材なので、そのような火災にも耐えることが可能です。

他にも、長寿命である点も魅力的です。前にも挙げた木造は法定耐用年数が22年であるのに対し、鉄筋コンクリート躯体は47年となっております。

鉄筋コンクリート躯体のデメリット

鉄筋コンクリート造のデメリットは建築コストが高額であることです。

一般に、コンクリートは打った後で一定の期間が過ぎないと本来の強度が出ません。そして、その日の分だけ工事が止まるので結果的に高コストになりやすいのです。


鉄骨躯体とは

次に、鉄骨躯体の特徴とメリット・デメリットを紹介します。

鉄骨躯体の特徴

鉄骨躯体とは、その名の通り、鉄骨で構成する躯体です。

構造の特性として、強い力が加わった場合には全体がしなるようにできています。

鉄骨躯体のメリット

鉄骨躯体のメリットは広い空間を作りやすい点にあります。そのため、今の住宅に見られる広いリビングダイニングキッチンを作りやすいです。

また、長寿命であることもメリットと言えるでしょう。鉄骨と聞くと金属腐食の問題が連想されますが、今の鉄骨は防錆処理や塗装が施されているので、腐食にも非常に強くなっています。

鉄骨躯体のデメリット

鉄骨躯体のデメリットは「熱を伝えやすい」点です。

これは鉄の素材そのものが持つ特性が現れたもの。「熱しやすく冷めやすい」といった材料特性が現れていると言えます。

ちなみに、今では性能の良い断熱材が登場し、外断熱工法も登場しています。しかし、このような構造を作る場合には、それなりの費用が必要です。住宅であれば住宅ローンの負担が大きくなることでしょう。


鉄骨鉄筋コンクリート躯体とは

次に、鉄骨鉄筋コンクリート躯体の特徴とメリット・デメリットを紹介します。

鉄骨鉄筋コンクリート躯体の特徴

鉄骨鉄筋コンクリートは鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた構造です。

鉄骨構造と鉄筋コンクリート構造の特性を併せ持つ構造と言えるでしょう。

鉄骨鉄筋コンクリート躯体のメリット

鉄骨鉄筋コンクリート造のメリットは耐震性や防火性に優れる点です。

地震が発生すると鉄骨部分で吸収します。また、コンクリート素材は燃えないので、防火性は高いです。

また、構造を鉄骨で支持するため、広い間取りとすることも可能です。

鉄骨鉄筋コンクリート躯体のデメリット

鉄骨鉄筋コンクリート造のデメリットは建築コストが上がりがちであることです。

構造そのものが複雑なのが災いして、建築コストは上がってしまいます。


まとめ

躯体について取り上げました。躯体の種類と躯体の特徴が把握できたのではないでしょうか。

また、メリット・デメリットについても理解できたものと思います。

躯体は建築物でも基本の部分。何を選ぶかで建物そのものが変わります。住宅を選ぶ際には、必ず躯体のチェックをしましょう。