初めてリフォームを考える際、多くの方が「予算内に収まるだろうか」という不安を抱えています。住宅リフォーム推進協議会の調査によると、実際、リフォーム経験者の約30%が当初の予算を超過してしまうというデータもあります。しかし、事前の計画と準備で予算超過は防げます。


この記事では、リフォームの費用を最適化するための3つの重要なステップを解説します。大切な住まいのリフォームを失敗なく成功させるための参考にしてください。

出典:住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査

予算オーバーの主な原因とは?まずは落とし穴を知る


予算内でリフォームを完了させるためには、まず予算オーバーが起こる典型的な原因を理解しましょう。多くの失敗例には共通する「落とし穴」があります。

想定外の追加工事

壁や床を解体した際に発見される予期せぬ不具合が追加費用を生み出します。シロアリ被害による柱の劣化や、古い配管の腐食など、目に見えない部分の問題は工事開始前には分かりません。

希望の増加とグレードアップ

「せっかくのリフォームだから」と途中で要望が増えていくケースもよくあります。最初は最低限の仕様だったのに、打ち合わせを重ねるうちに設備のグレードアップや追加オプションを加えていくと、気づかないうちに数百万円単位で予算が増加することもあります。

見積もりに含まれていない諸費用

リフォーム工事費だけでなく、仮住まいの賃貸料、引っ越し費用、廃材処分費、設計料、住宅ローン関連費用、リフォーム後の家具購入費など、付随する費用の見落としも予算オーバーの原因になります。

設計変更や工期延長

工事開始後のプラン変更は追加費用につながります。また変更に伴い工期が延びると、仮住まい費用や人件費などさらなる出費が生じることもあります。


ステップ1:明確な目標設定と必要な予算の見極め


予算オーバーを防ぐ最初のステップは、リフォームの目的を明確にし、必要な予算を見極めることです。

リフォームの目的と優先順位を明確にする

「なぜリフォームをするのか」「どこをどう改善したいのか」を具体的に整理しましょう。例えば「収納を増やしたい」「キッチンの動線を改善したい」「断熱性能を高めたい」など、目的を明確にすることで必要な工事内容が見えてきます。

複数の目的がある場合は優先順位をつけましょう。「絶対に実現したいこと」と「できれば実現したいこと」を区別しておくと、予算配分の指針になります。

情報収集と相場の把握

希望するリフォーム内容の相場を調べておきましょう。インターネットやショールームで情報収集し、現実的な予算イメージを持ちます。キッチンやバスルームなどはグレードによって数十万円単位で費用が変わります。

バリアフリーや省エネ改修には公的補助が利用できる場合もあるので、確認しておくとよいでしょう。

必要な予算をシミュレーション

リフォームの目的と相場を把握したら、自分たちが使える予算の上限を設定します。このとき、工事費用だけでなく付随する諸費用も含めた総額を計算し、余裕を持たせておくことが大切です。例えば「予算300万円+予備費10%」のように設定しておくと安心です。


ステップ2:適切な業者選びと見積もり取得のコツ


信頼できる業者を選び、適正な見積もりを取ることが次のステップです。

複数の業者から相見積もりを取る

リフォーム費用は業者によって金額やプラン内容が大きく異なります。2〜3社から相見積もりを取り、比較することで適正な相場がわかり、不要な工事や高すぎる見積もりを見分けられます。

「相見積もりは失礼では?」と心配する必要はありません。一般的な方法で、消費者を守る有効な手段です。

見積もり依頼時のポイント

各社に伝える工事内容や条件を統一し、同じ土俵で比較できるようにします。「他社にも見積もりを依頼している」ことを伝えておくと、真摯で妥当な提案を受けやすくなります。

見積書は項目ごとに金額が明細化されているか確認しましょう。内訳が不明瞭な「一式見積もり」では後から追加請求が発生しやすいので注意が必要です。

業者選定のポイント

実績と評判を調査し、信頼できる業者かどうかを確認します。リフォーム瑕疵保険への登録、建設業許可や一級建築士事務所登録の有無も確認しましょう。

また、見積もり段階での提案力や対応の丁寧さもチェックポイントです。各業者の見積もり範囲に違いがないか注意し、「見積もりに含まれていない費用はありますか?」と事前に確認しておきましょう。


ステップ3:不測の事態に備えた予備費の確保


どんなに計画を練っても、リフォーム工事では予測できない事態が起こり得ます。そこで重要なのが「予備費」の存在です。

予備費を最初から組み込む

リフォーム予算を立てる際には、あらかじめ総予算の中に予備費を含めておきましょう。一般的には工事費用の10〜20%程度を確保しておくと安心です。

例えば総額300万円まで出せる場合、そのうち30〜60万円は「万一の時のため」として確保しておきます。予備費があれば、想定外の費用が発生しても計画を大きく崩さずに済みます。

予備費の使い方

予備費は工事中に必要が生じた場合に初めて使うものです。最初から予備費をあてにして高価なオプションを追加するような使い方は避けましょう。

結果的に予備費を使わずに済んだ場合は、無理に消化せず、ローンの繰上返済やリフォーム後の家具購入費に充てるとよいでしょう。


工事中も油断禁物!追加費用を防ぐための進行管理術


契約後も進行状況を管理することで予算オーバーのリスクを減らせます。施主として押さえておきたいポイントを紹介します。

現場の状況をこまめに確認

工事が始まったら、契約書や見積書通りに進んでいるかを自分の目で確認しましょう。工事内容について担当者に説明を受け、気になる点はその場で質問・確認する習慣を持つことが大切です。

「図面とは違うのでは?」と感じた箇所は遠慮なく指摘しましょう。早期に修正できれば、後から手直しする二度手間を防げます。

追加や変更は必ず書面で

工事途中で「ここも直してほしい」という要望が出てきた場合は、口頭だけでなく必ず追加工事の見積書と契約書を作成してもらいましょう。書面がなければ、後々トラブルになる恐れがあります。

工期管理とスケジュール調整

工期延長は追加費用の発生につながるため、スケジュール管理も重要です。工程表通りに進んでいるか確認し、施主側の都合で日程が延びないよう、決断は早めにしましょう。

また、工期が延びる可能性も見越して引越日などに余裕を持たせておくことも必要です。


満足度を下げない!優先順位で差がつく費用のかけ方


ただ安くあげることだけが目的では本末転倒です。予算配分にメリハリをつけて満足度を高めることが大切です。

優先度の高い部分にしっかり投資

リフォームの主目的や絶対に譲れないポイントには、予算を惜しまず投資しましょう。例えば「水回りの刷新」が目的なら、キッチンや浴室には信頼できるメーカーの設備を選び、配管もきちんと更新します。

雨漏りやシロアリ被害など、家の寿命に関わる部分の改修は最優先です。本当に必要な部分をしっかりリフォームすることが、満足度の高い住まいにつながります。

優先度の低い部分はコストダウン

「緊急ではない箇所」や「あれば嬉しいオプション」は、なるべく費用をかけない工夫をします。内装の高級な意匠や凝った造作収納などは、予算に余裕があるときや将来のリフォームに見送ることも検討しましょう。

満足度を高める賢い予算配分

一般的に満足度に直結するのは「使い勝手や性能が向上する部分」です。断熱改修や耐震補強、キッチンや浴室の設備更新は費用対効果が高い傾向にあります。

一方、見た目のデザイン性は後から変更も可能です。照明やクロス(壁紙)は将来的にも比較的簡単に変えられますが、構造躯体や給排水設備の更新は後から単独で行うのは困難です。

限られた予算は「後から取り返しがつかない部分」や「日々の満足度に直結する部分」に優先的に配分しましょう。

リフォームで予算オーバーを回避し、満足のいく仕上がりにするためには、「計画段階の準備」「契約までの段取り」「工事中の管理」という段階ごとにポイントがあります。予算オーバーの落とし穴を知った上で、「目的の明確化→見積もり比較→予備費確保」という3つのステップを踏み、さらに工事中も適切に対応すれば、予算内でも満足度の高いリフォームが実現できます。

費用の最適化は決して難しいことではありません。事前のひと工夫と心構えで、理想の住まいを手に入れてください。