シックハウス症候群とは?予防につながる素材選びと換気の必要性

ずっと心待ちにしていた、新築やリフォームしたばかりのマイホームでの暮らし。しかし、その新しい住まいがシックハウス症候群の原因となり、家族の健康を脅かすことがあります。
本記事では、シックハウス症候群の基礎知識から、家族を守るための安心な素材選び、効果的な換気方法まで、健やかな暮らしを実現する家づくりのポイントをわかりやすく解説します。
シックハウス症候群とは?
シックハウス症候群とは、住宅の建材や家具などに含まれる化学物質によって汚染された室内の空気を吸い込むことで生じる健康障害の総称です。主な症状として、目のかゆみや鼻水、のどの渇き、皮膚の赤み、湿疹などが挙げられます。さらに、めまいや頭痛、吐き気、喘息の発作といった、より深刻な状態に陥ることもあります。
主な原因物質は、建材の接着剤や塗料に使われる「ホルムアルデヒド」や、合成樹脂や合成ゴムなどに使われる「アセトアルデヒド」をはじめとする、13種類の揮発性有機化合物(VOC)です。これらは空気中に広がりやすい性質を持つ化学物質で、特に新築やリフォーム直後の住宅で発散量が多くなる傾向にあります。
ただし、原因物質があるからといって必ず発症するわけではなく、体質による個人差が大きいのが特徴です。まったく発症しない人がいる一方、免疫力の低い子どもや高齢者は影響を受けやすいといわれています。
シックハウス症候群になってしまう3つの要因
シックハウス症候群は、なぜ起きてしまうのでしょうか。その背景には、家づくりや暮らし方に潜むいくつかの要因が関係しています。ここでは、シックハウス症候群につながる主な3つの要因について見ていきましょう。
(1)化学物質を含む建材や家具の使用
シックハウス症候群の最も直接的な原因は、新築時やリフォーム時に、化学物質を含む建材や家具を使用することにあります。
代表的な原因物質であるホルムアルデヒドは、安価で加工しやすいため、壁紙の接着剤や合板、断熱材、さらにはタンスや棚といった家具にまで幅広く利用されてきました。化学物質を原料に含む建材や家具を室内に設置すると、内部から出てきた物質が空気中に放散され、室内の空気を汚染します。その結果、住んでいる人の健康に影響を及ぼすのです。
(2)不十分な換気
換気が行き届いていない住環境も、シックハウス症候群のリスクを高める大きな要因といえます。なぜなら、建材などから空気中に飛散した原因物質は、換気によって屋外へ排出しない限り、室内にどんどん蓄積されてしまうからです。
特に、原因物質の発散量が多い新築・リフォーム直後は、室内の空気も停滞しやすい環境にあります。そのため、住み始めた直後は窓を開ける、換気扇を回すといった意識的な換気が欠かせません。換気不足は化学物質の濃度を高め、シックハウス症候群を発症しやすい環境を生み出してしまいます。
(3)高気密な家づくり
近年の住宅性能の向上も、シックハウス症候群の一因といわれています。最近は、断熱効果による省エネや快適性アップの観点から、高気密の家づくりが一般的になりました。住宅の気密性が高まると、外気の影響を受けにくくなって快適な温度を保ちやすくなる反面、室内の空気が外に排出されにくくなります。
これは同時に、化学物質も室内にとどまりやすくなることを意味します。断熱性能の高い家ほど、計画的に換気を行うことが求められるのです。
シックハウス症候群予防につながる素材選び
シックハウス症候群を予防するうえで、原因となる化学物質をできるだけ室内に持ち込まないことが第一歩となります。化学物質の使用を抑えるために有効なのが、安全性の高い素材や自然素材を積極的に活用することです。
素材選定の基準となる「ホルムアルデヒド発散等級」
シックハウス症候群になりにくい建材を選ぶ際に基準となるのが、「ホルムアルデヒド発散等級」です。これは住宅性能表示制度で定められた評価項目の一つで、その商品からのホルムアルデヒドの発散量がどれだけ少ないかを示します。
JIS規格の「F」と「☆」の数で表される形式が一般的で、等級1相当が「F☆☆」、等級2相当が「F☆☆☆」、等級3相当が「F☆☆☆☆(フォースター)」です。等級および☆の数が増えるほど、ホルムアルデヒドの発散量が少ないことを表します。
このうち最高等級である「F☆☆☆☆」は、建築基準法で使用面積の制限なく使える、最も安全性の高い建材に与えられる評価です。家づくりの際は「F☆☆☆☆」の製品を選ぶことで、シックハウス症候群の予防に効果が期待できるでしょう。
シックハウス症候群予防に効果的な自然素材
化学物質の使用を極力避けたい場合には、自然素材の活用がおすすめです。化学物質の心配が少ないだけでなく、空間に安らぎや温かみを与えてくれる点も魅力といえるでしょう。ここでは、シックハウス症候群予防に効果的な自然素材の代表例を紹介します。
無垢材
1本の木から切り出された木材で、合板のように接着剤を用いていません。室内の湿度を調整する調湿機能を持ち、結露やカビの予防にもつながります。
漆喰(しっくい)
消石灰を主原料とする自然素材の塗り壁材。化学物質を含まないうえ、塗り壁材なので施工に接着剤を使わないのもポイントです。調湿機能や消臭機能を備え、有害物質を吸着・分解する効果も期待できます。
珪藻土(けいそうど)
植物性プランクトンの一種である、珪藻の化石からなる物質を原料とする自然素材です。漆喰と同様に化学物質を含まず、高い調湿機能を有するのが特徴で、有害物質を吸着する性能も持ち合わせています。
シックハウス症候群予防に効果的な換気のこと
素材選びとあわせて、シックハウス症候群対策の大切な要素となるのが「換気」です。室内の汚染された空気を排出し、新鮮な空気を取り入れることで、化学物質による影響を小さくする効果が期待できます。ここでは、シックハウス症候群の予防に効果的な換気方法について、具体的に解説しましょう。
シックハウス症候群予防の基本となる24時間換気システム
現在の住宅における換気の基本は、「24時間換気システム」です。24時間換気システムは、シックハウス症候群が社会問題化したことを受け、2003年7月に新築住宅への設置が義務付けられました。このシステムの効果を十分発揮するためには、24時間常に作動させておくことが求められます。
なかには、電気代を気にして停止する方もいるかもしれませんが、シックハウス症候群対策を考えるのであれば、常時稼働を心がけましょう。換気システムにより、一定の周期で室内の空気が新しいものに入れ替わるため、空気中に飛散する化学物質を効果的に外部へ排出できます。
効果を高める換気方法
24時間換気システムの効率をさらに高めるには、他の換気方法との併用がおすすめです。例えば、新しい家具や建材の設置箇所の近くにある換気扇を稼働させると、原因物質を含む空気をより素早く排出できます。
また、気候のよい時季であれば、定期的に窓を開けて空気の流れを作ることで、換気を一層促進できます。その際、対角線上にある2ヶ所の窓を開けると風の通り道ができて、効率的に空気を入れ替えられるのでおすすめです。
フィルターろ過式の空気清浄機
24時間換気システムと空気清浄機を併用することも、シックハウス症候群の予防に役立ちます。
なかでも、微細な粒子を捕まえることのできる高性能な「HEPAフィルター」を搭載した製品がおすすめ。空気中に浮遊するハウスダストだけでなく、シックハウス症候群の原因物質の一部をろ過する機能も期待できます。窓開け換気が難しい時期は、24時間換気システムと空気清浄機を組み合わせて、室内の空気をろ過しながら換気するのが効果的でしょう。
まとめ
シックハウス症候群は、建材や家具からの化学物質、そして換気不足がおもな原因となって引き起こされます。最近の高気密な家では空気が室内にとどまりやすいため、24時間換気システムを正しく使用するとともに、必要に応じて他の換気方法を組み合わせ、シックハウス症候群の原因物質を外部へ排出することが重要です。
これから家を建てる方やリフォームを検討中の方は、今回紹介した内容を意識して、安心で快適な住まいを実現しましょう。