中古マンションのリノベ前に知るべき「築年数」の落とし穴とは?

近年、中古マンションを購入して自分好みにリノベーションするという暮らし方が人気です。なかでも築古物件は価格が魅力的ですが、購入前に知るべき「落とし穴」も存在します。
この記事では、築年数が古い中古マンションにありがちな落とし穴と、中古マンションの購入前に意識すべきチェックポイントを紹介します。後悔のない中古マンション選びとリノベーションを叶えるため、ぜひお役立てください。
築年数が古い中古マンションにありがちな落とし穴4選
価格の安さが魅力の築古マンションですが、築年数が経過しているがゆえの「落とし穴」も存在します。購入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、次の4つのリスクを十分理解しておきましょう。
(1)耐震性や断熱性などの住宅性能が低い
築古マンションでまず懸念されるのが、住宅性能の低さです。特に、1981年5月31日以前に建築確認が行われた物件は「旧耐震基準」で設計されている点に注意しましょう。これは震度5程度の揺れで倒壊しない基準とされており、震度6強〜7の揺れで倒壊しないことを想定した現行の「新耐震基準」と比べると、安全性に大きな差があります。
また、住宅の断熱性能も年々進化しており、築古マンションは近年の物件に比べて断熱性や気密性に劣るケースがほとんどです。夏の暑さや冬の寒さが伝わりやすく、光熱費がかさんだり、結露やカビの発生に悩まされたりすることもあります。防音性が低い場合も多く、暮らしの快適性に影響することもあるでしょう。
(2)希望どおりに住宅ローンを借りられない場合がある
中古マンションの購入にも住宅ローンを利用できますが、新築とは状況が異なるため、注意が必要です。金融機関は返済不能に陥った場合に備え、融資と引き換えに物件に抵当権を設定します。このとき、一定の担保価値がないと売却しても債権を回収できないため、築古で担保価値が低いと判断されると、融資額を減らされたり返済期間を短くされたりするおそれがあるのです。
金融機関によっては「築年数20年以内」といった独自の要件を設けており、そもそもローンを借りられないことも。リノベーション費用をあわせて借りる「一体型ローン」を検討する場合、物件の価値がよりシビアに評価されるため、築年数が障壁になりやすいことは頭に置いておきましょう。
(3)購入直後に大規模修繕の時期を迎える場合がある
マンションでは資産価値を維持するため、12〜15年に1回程度、大規模修繕が行われます。費用は、住民が毎月支払う修繕積立金で賄うのが基本です。
新築で最初から住んでいる場合、定期的に大規模修繕の時期を迎えることになりますが、築古物件を中古で購入するケースでは、直後に大規模修繕の時期を迎える可能性があります。積立金が不足していると「修繕積立一時金」として、数十万円から数百万円単位の追加負担を求められることもあるでしょう。購入前に長期修繕計画や総会の議事録を確認し、管理組合の財政状況を把握しておくことが、リスク回避につながります。
(4)リフォーム費用が高くなる場合がある
断熱性や防音性に問題があれば、快適性を高めるために断熱材の追加や二重窓の設置などが必要になるでしょう。また、築30年以上のマンションでは、壁や天井の断熱材にアスベストが使用されていることもあり、除去費用として数十万〜数百万円かかるケースもあります。
さらに、築古の団地などで見られる在来工法の浴室は、防水工事からやり直す必要があり、ユニットバスへの変更費用が高額になりがちです。配管の老朽化や壁内部の劣化などは、見た目ではわかりにくく、解体後に想定外の問題が見つかることも珍しくありません。こうした結果、リフォーム費用が膨らみ、全体で見ると新築や築浅と変わらないコストがかかる場合もあるのです。
築年数が古い中古マンションのメリット3選
注意すべきポイントは多いものの、築古マンションには新築や築浅にないメリットもあります。デメリットを正しく理解したうえで検討すれば、賢い選択肢となり得るでしょう。ここでは、築古マンションを選ぶメリットを3つ紹介します。
(1)新築や築浅に比べて物件価格が安い
築古マンション最大のメリットは、物件価格の安さです。一般的にマンションは、築年数が経過するごとに価格が下落します。東日本不動産流通機構のデータ(2025年4月〜6月)によれば、中古マンションの築年数別に見た、1m2あたりの単価は次のとおりです。
築年数 | 1m2あたりの単価 |
---|---|
5年未満 | 150.9万円 |
5〜10年未満 | 135.1万円 |
10〜15年未満 | 116.4万円 |
15〜20年未満 | 99.7万円 |
20〜25年未満 | 88.1万円 |
25〜30年未満 | 68.6万円 |
30年以上 | 44.7万円 |
※出典:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2025年4月~6月)」
このデータからも、築20年を超えると、新築や築浅の半分程度で購入できる可能性があることがわかります。物件取得費用を抑えた分をリノベーションにかけられるため、建材や設備の選択肢が広がる点は大きな魅力といえるでしょう。
(2)資産価値が下がりにくい
前のデータからわかるとおり、マンションの価格は、築年数が浅いうちの下落幅が大きくなる傾向にあります。特に新築物件は、販売価格の1〜3割が「新築プレミアム」として上乗せされているともいわれ、少しでも人が住むと大きく価値が下がるのです。
その点、築20年以上を経過した物件は価格の下落幅が穏やかになり、価格が底値に近い状態になります。そのため、購入時から資産価値が下がりにくくなります。ライフスタイルの変化によって数年後に売却することになっても、購入時とさほど変わらない価格で売却できる可能性があるでしょう。
(3)立地のよい物件が見つかりやすい
駅近や都心部など利便性の高いエリアは、すでに開発が進んでいるケースが多く、新築マンションの供給数は限定的です。一方、中古マンションは、都市が発展するなかで建てられているため、好立地なエリアでも比較的多く供給されています。
築年数が古い物件まで検討範囲を広げれば、物件の選択肢は格段に増えるでしょう。通勤・通学の利便性や周辺の商業施設、公園の有無など、自分たちのライフスタイルに適した場所を選びやすいというのは、築古マンションならではの魅力です。
リノベーション向け中古マンション|購入前のチェックポイント
リノベーションを前提に中古マンションを選ぶなら、購入前に確認すべき点がいくつかあります。物件選びの際に見逃せない、3つのチェックポイントを解説しましょう。
耐震性能と修繕履歴の内容
旧耐震基準のマンションを購入する場合、耐震補強工事の有無や「耐震基準適合証明書」が取得可能かどうかを確認しましょう。この証明書があれば、1981年以前に建築された物件であっても、住宅ローン控除などの税制優遇を受けられる場合があります。
あわせて、修繕履歴のチェックも欠かせません。定期的な修繕が実施されているか、次の大規模修繕の予定はいつか、修繕積立金は十分か、といった点も必ずチェックしましょう。これらは管理組合がきちんと機能しているかを見極める指標にもなり、暮らしの安全性確保につながります。
共用部分の管理状況
リノベーションで刷新できるのは専有部分のみ。それだけに、自分たちでは手を加えられないエントランスや廊下、ゴミ置き場といった共用部分が、きちんと清掃・メンテナンスされているかは、マンション選びで必ず確認したいポイントです。
あわせて、マンションの管理規約にも目を通しておきましょう。専有部分のリノベーションであっても、フローリングの遮音等級が決められているなど、使える建材や工事内容が制限されている場合があります。ほかにも、ペットの飼育可否や楽器演奏のルールなど、暮らしに直結する項目も定められているため、事前の確認が不可欠です。
建物構造
リノベーションで間取り変更を希望する場合、建物の構造が「ラーメン構造」か「壁式構造」かというのも重要なチェックポイントです。「壁式構造」は、耐力壁が多いため間取り変更には不向きな反面、柱や梁が室内に出てこないので開放的という利点があります。一方、柱と梁でできた枠で建物を支える「ラーメン構造」は、間取り変更の自由度が比較的高いものの、室内に柱や梁が出やすい点はデメリットです。
希望するリノベーションプランや現在・将来のライフスタイルにあわせて、適切な構造の物件を選びましょう。
まとめ
価格の安さや立地の良さが魅力の築古マンションですが、住宅性能の低さや思わぬ費用の発生など、思わぬ「落とし穴」も存在します。築年数の経過によるメリットとデメリットの両方を正しく理解し、希望するリノベプランやライフスタイルと照らし合わせて、適切な築年数の物件を選ぶことが重要です。
築年数の古いマンションをリノベする際は、耐震補強や断熱リフォームなど、住まいの快適性・安全性を高める工事が欠かせません。そのため、マンションリノベの実績が豊富で信頼できるリノベーション会社に依頼しましょう。