水栓(蛇口)の材質には何がある?仕組みの種類や選び方も解説
キッチンや洗面所、浴室など、毎日の暮らしに欠かせない水栓(蛇口)。長年の使用で不具合が出たり、使い勝手に不満を感じたりして、交換やリフォームを検討している方もいるでしょう。しかし、いざ選ぼうとすると「素材はどれがいい?」「どの種類が適している?」と迷うケースも少なくありません。
そこでこの記事では、水まわりリフォームで迷わないために知っておきたい、水栓の材質や仕組みの種類、選び方のポイントを解説します。
水栓(蛇口)の主な材質3種類と特徴
家庭の水栓(蛇口)に使われる材質は、大きく分けて以下の3種類です。
真鍮
ステンレス
樹脂(プラスチック)
材質ごとに耐久性やデザイン、価格帯などが異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで選ぶようにしましょう。
(1)真鍮

家庭用水栓の素材として広く普及しているのが「真鍮(しんちゅう)」です。銅と亜鉛の合金で「黄銅」とも呼ばれ、5円玉硬貨の素材としても知られています。私たちがよく目にする銀色の水栓は、真鍮の上にメッキ加工をしたものです。
特徴は加工のしやすさと耐久性の高さ。複雑な形状も作りやすく、凝った造形からシンプルなものまでデザインの種類が豊富。水に触れる環境で長期間使用しても劣化しにくいため、水まわり製品に適しています。
ただし、そのままだと酸化して黒ずんだり、「緑青」という青緑色のサビが発生したりすることがあります。そのため、一般的な水栓では表面に「ニッケルクロムメッキ」などの加工を施し、美しい光沢とさらなる耐食性を実現しているのです。
(2)ステンレス

キッチンのシンクなどでおなじみの「ステンレス」も、水栓によく使われる素材です。鉄を主成分とし、クロムやニッケルなどを混ぜ合わせた合金です。
鉄の弱点であるサビが生じにくいのが最大の特徴。水道水のミネラル分による汚れや劣化にも強いため、長期間使用しても美しさを保てます。腐食への耐性も高いため、雨風にさらされる屋外の水栓にも最適です。
一方で、加工が難しく、複雑なデザインを作るのには向きません。また、製品価格も真鍮製より高価になる傾向があります。独特の重厚感や圧倒的な耐久性を求める場合は、ステンレスを選ぶとよいでしょう。
(3)樹脂(プラスチック)

軽量で扱いやすいのが「樹脂(プラスチック)」製の水栓です。
最大の魅力は価格の安さ。真鍮やステンレスに比べてリーズナブルなうえ、金属ではないためサビの心配がなく、腐食にも強いというのも利点です。軽くて取り付け作業がしやすい点もメリットといえるでしょう。
しかし、耐久性は金属に及びません。長期間使用すると経年劣化で素材が硬化し、割れや破損を起こすリスクがあります。また、質感はどうしても安っぽくなりがち。紫外線に弱いので、屋外での長期使用も避けたほうがよいでしょう。
こうしたことから、樹脂製の水栓は「とにかくコストを抑えたい」「仮設で一時的に使いたい」といった場合に適しています。
合わせて知っておきたい水栓の種類|単水栓と混合栓
水栓選びでは、素材だけでなく「どう水やお湯を出したいか」も意識する必要があります。水栓は仕組みによって「単水栓」と「混合栓」の2つに分けられます。それぞれ適した用途や設置場所が異なるため、特徴を理解しておきましょう。
単水栓

「単水栓」は、水またはお湯の一方のみを出すシンプルなタイプの水栓です。
構造は単純で、ハンドルやレバーで水(またはお湯)を出したり止めたりします。水栓自体で温度調節はできないため、水だけが使えればいい場所に適しています。
単水栓としては、学校の手洗い場でよく見られる「万能ホーム水栓」や、古い住宅のキッチンにある「自在水栓」などが代表的です。現代の住宅では、洗濯機用水栓や庭の散水用水栓といった、お湯を使う必要がない場所でよく使われます。
混合栓
「混合栓」は、一つの吐水口から水とお湯の両方が出てくるタイプの水栓です。水もお湯も自由に使えることから、現代の住宅ではこの混合栓が主流です。操作方法や仕組みによってさらにタイプが分かれるため、代表的な3つを紹介します。
2バルブ(ハンドル)混合栓

水用とお湯用、独立した2つのハンドルがついているタイプです。「水」の青いキャップと「湯」の赤いキャップのハンドルが並んでいる水栓、といえばイメージできるのではないでしょうか。
お湯を出したいときは赤いハンドル、ぬるくしたいときは青いハンドルも回して水を足す、というように両方を操作して流量と温度を調節します。
2バルブ混合栓はリーズナブルなうえ、構造が単純で修理しやすいのがメリットです。一方、毎回2つのハンドルを回して温度を調整しなければならず、手間がかかるのはデメリットといえるでしょう。
現代の浴室やキッチンで使われることは少なくなりましたが、レトロなデザインとしてあえて採用することもあります。
シングルレバー混合栓

現在、システムキッチンや洗面台で最も多く採用されているのが「シングルレバー混合栓」です。1つのレバーハンドルだけで、すべての操作が完結するのが特徴です。
レバーを上下に動かすと吐水・止水と水量調節、左右に動かすと温度調節ができる形式が一般的。片手でスッと操作できるため、料理中や洗顔中で手が汚れていても、手の甲などで簡単に扱えます。作業効率を上げたい場所にもおすすめの水栓です。
サーモスタット混合栓

主に浴室の水栓として普及しているのが「サーモスタット混合栓」です。左右にハンドルがあり、片方で温度調節、もう片方で流量調節できるようになっています。
最大の特徴は、自動温度調節機能(サーモスタット)が付いている点。片方のハンドルで温度設定すれば、水圧やお湯の温度が変化しても内部で自動調整し、常に設定温度のお湯を出してくれます。急に熱いお湯や冷たい水が出るのを防げるため、入浴中も安心して使える水栓です。
水栓の選び方3つのポイント
水まわりリフォームで水栓を交換するにあたって、適切な水栓を選ぶには、次の3つのポイントを意識しましょう。
(1)取り付ける穴の数とサイズに合わせて選ぶ
(2)使用場所に合わせて選ぶ
(3)必要な機能で選ぶ
ここでは、各ポイントについて詳しく解説します。
(1)取り付ける穴の数とサイズに合わせて選ぶ
まず大前提として、自宅の設備に取り付けられるかを確認しましょう。
水栓はカウンターやボウルの「穴」に固定されています。この穴の数とサイズが合致する水栓でなければ、取り付けることができません。水栓の取り付け方法には、穴が1つの「ワンホール」、2つの「ツーホール」、壁に付ける「壁付タイプ」などがあります。
穴の直径もメーカーや年代で異なる場合があるため、リフォーム前に既存の水栓の品番やサイズを確認しておくとスムーズです。この「穴のタイプ」が合致しないと、そもそも取り付けができません。不安なら、リフォーム会社に現地調査を依頼しましょう。
(2)使用場所に合わせて選ぶ
水栓選びの基本は、使用場所に合わせることです。場所によって求められる機能や役割が異なるため、適した水栓の材質や種類も変わります。
頻繁に水温や水量を調整する必要があるキッチンや洗面所なら、操作がシンプルな「シングルレバー混合栓」が便利です。一方、浴室なら温度を一定に保ちやすい「サーモスタット混合栓」が適しているでしょう。先述のように、洗濯機置き場や屋外水栓など、お湯を使わない場所なら「単水栓」で十分です。
材質も場所との相性を考えましょう。湿気が多い場所や屋外では、耐久性の高い「ステンレス」やメッキ加工された「真鍮」が安心です。屋内であれば「樹脂製」でコストを抑えるのも一つの方法でしょう。
(3)必要な機能で選ぶ
設置場所とも連動しますが、「お湯を使うのか使わないのか」「汚れた手で触れるのか」など利用シーンを想定して、必要な機能のある水栓を選ぶのがおすすめです。
例えば、汚れた手で触れることの多いキッチン水栓なら「タッチレス水栓」を検討したいところ。センサーに手をかざすだけで水が出るため衛生的で、掃除の手間も省けます。「浄水器一体型水栓」なら、わざわざ浄水器を付けなくても飲料水を使えるうえ、シンク周りがすっきりします。
洗面所なら、ホースを引き出せる「シャワーホース付き水栓」が便利。ボウルの掃除や洗髪など用途が広がります。
まとめ
水栓には、耐久性に優れた「真鍮」や「ステンレス」、コスト重視の「樹脂」といった素材が使われており、それぞれに材質や特徴が異なります。また、「単水栓」や「混合栓」といった機能面の違いも、日々の使い勝手に関わる要素です。
リフォームで水栓を新しくする際は、デザインだけでなく、具体的な利用シーンに合った材質・種類の製品を選びましょう。