住宅のリノベーションには業者との打ち合わせが重要で、可能な限り意思疎通がされなければいけません。勘違いは非常に危険で、取返しのつかない場合があるからです。

そのため、施主の立場としても建築に関する知識は非常に重要。特に用語の理解は誤解を避ける上でも不可欠と言えます。

この記事で取り上げる「垂木」もそのような建築用語の内の1つです。部材を示す用語なのですが、一般的ではないため理解しておく必要があります。

それでは、垂木とはどのような部材なのでしょうか。

垂木とはどんな部材か

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垂木とは屋根を支持する部材です。

屋根には屋根材の下に野地板というパネル材を張りますが、その野地板を支持する部材で、斜めに走らせます。

ところで、垂木には相応の強度がなければいけません。と言うのも、垂木には野地板と屋根材が乗り、更に外からの力も加わるからです。

例えば、雪が降った場合には雪の重量も加わります。また、台風などの強風時には屋根材には引きはがす力が加わります。当然ながら、垂木は引きはがす力にも耐えなければいけないのです。


垂木として使われる素材

垂木として使われる素材 イメージ

次に、垂木として使われる素材と部品について解説します。

素材について

まずは使われる素材について取り上げましょう。

垂木には杉や米松、エゾ松などが多く使われます。これらの素材は寸法安定性が高いのが特徴です。

また、リフォームにおいては木材ではなくスチール材を使うこともあります。スチール材は重量がありますが高い強度で、しかも強度のバラつきは少ないです。ネジやボルトも容易に使えるメリットもあります。

いずれにせよ、垂木や屋根を支持する重要な部分です。強度と寸法安定性が欠かせず、素材には高い品質が要求されるのです。

使用する部品について

今の住宅は耐震性の確保のため、構造部材の接合にはスチール製のものを使っています。

例えば、釘などは引っ張りで1平ミリメートルあたり40kg以上の強度を持つものも多いです。

屋根には積雪、地震による振動、強風による剥がす力など、様々な強さの力が加わります。しかし、垂木をこのような強度の高い部品で接合しているので耐えられるのです。


垂木に加わる力について

前述のように、屋根には積雪や振動、そしいて剥がす力が加わります。当然ながら、垂木にはこれらの力を耐える強度が必要です。では、垂木にはどのような力が加わるのでしょうか。

圧縮

まずは圧縮が考えられます。

これは屋根の自重と積雪時の重量、または強風で押し付けられる時の下向きの力です。垂木には圧縮させる力が加わります。

曲げ

次に考えられるのが曲げる力です。

屋根には野地板が貼ってありますが、その野地板を介して垂木に曲げる力が働きます。

ちなみに、雪が降った場合などは下向きに力が加わりますが、強風の時の吹き上げられる場合には上向きの力が加わります。曲げる力も上下方向に加わるのです。

釘などの引き抜き

強風などで屋根が吹き上げられる場合には下から上に力が加わりますが、この時には釘をはじめとした締結する部品に全部の力が集中して加わります。

釘の場合であれば、引き抜きの力が加わるのです。

なお、釘の部分の壊れ方はケースバイケースで、釘の太さと長さによって異なります。ある場合は釘が引き抜けますし、別の場合では釘が破断します。


垂木に要求される品質と施工

このように垂木には様々な力が加わるので、一定の品質が確保されなければいけません。

では、どのような点が重要なのでしょうか。

ここでは、代表的な垂木の要求品質と施工について取り上げてみましょう。

強度の安定性

前述のように、垂木にはさまざまな外力が加わります。

それに耐えるためには強度も大切なのですが、強度の安定性も非常に重要となります。

というのも、仮にバラつきが大きくて弱い部分があった場合、その弱い部分から破損してしまうからです。そして、1本の垂木が破損してしまえば、その他の部材の破損確率が上がります。

しかし、強度が安定するのであれば、弱い部分が出にくくなります。垂木の破損確率も減るので、屋根の強度も維持できるのです。

寸法安定性

寸法安定性も大切です。

例えば、温度による伸縮が大きくなる材料がありますが、そのような材料を使うと、接合部分に無理な力が加わることがあります。

その点、寸法安定性が良ければ伸縮そのものが少なくなるので、接合部分に無理な力を加えません。建物も長持ちするのです。

施工精度

施工精度も非常に大切です。仮に、寸法精度が悪ければ、最悪は破損に繋がるからです。

例えば、垂木と垂木の間隔が適切でない場合には1本の垂木に必要以上の力が加わり、破壊するリスクが高まります。1本破損すれば他の垂木にも余分な力が加わるので、破損リスクがますます高まるでしょう。

ちなみに、垂木の施工精度は屋根を張ってしまうと外からでは分かりません。

接合部品の適切な配置

垂木の強度は垂木そのものの強度と太さが必要なのですが、接合部分の強度も確保されなければいけません。

そのためには接合部品を適切に配置する必要があります。

部品の配置が不適切な場合、最悪は接合部品の破損だけでは済みません。状況によっては屋根そのものも破損し得るのです。

ちなみに、悪質な手抜き工事には釘の本数を減らしたり、適切な接合部品を使わなかったりする例があります。いずれも屋根の破損に繋がる危険な工事です。


垂木に異常があった場合の弊害について

ところで、垂木に異常が発生した場合にはどのような弊害が生じるのでしょうか。

ここでは垂木の異常によって発生する不具合の代表例を挙げてみましょう。

雨漏り

垂木に異常が発生し、強度が落ちてしまうと屋根全体がゆがむようになります。

垂木の強度が落ちると屋根そのものも弱くなってしまい、たわみやすくなるのです。

屋根がゆがむと雨仕舞の部分が弱くなってしまい、雨漏りがしやすくなります。そして、雨漏りが続くのであれば、垂木の劣化が早まってしまい、屋根の強度も落ちてしまうのです。

天井の異常

雨漏りが発生すると屋根裏に雨水がたまり、天井裏の部材を腐らせてしまいます。

この状態は天井の下からは見えず、目で見て異常が分かるのには時間が掛かる場合が多いです。天井にシミが出来たり、ブヨブヨにゆがんだりしてから分かる場合が多いのです。

そして、このような状態が長く続くと天井裏の部材の強度が落ちてしまいます。場合によっては天井材を支持する強度もなくなってしまい、天井がはがれ落ちる場合もあるのです。

屋根がはがされる

雨漏りが発生して垂木が濡れてしまい、そのままの状態で放置されると、垂木が腐ってしまいます。

垂木が腐ると強度が著しく落ちてしまいます。垂木の強度が落ちると屋根の強度も落ちてしまい、場合によっては屋根が強風ではがされてしまうのです。

ちなみに、近年の台風は昔よりも規模が大きくなっています。垂木の強度が落ちたままでそのような台風に遭遇したならば非常に危険です。屋根の破壊のリスクは高くなるのです。


まとめ

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垂木について紹介しました。

垂木は屋根の下に走らせる部材ですが、どれだけ重要であるかが把握できたものと思います。

また、中古住宅の購入を検討している人には、垂木のチェックをどうしたものか考えた人もいるかも知れません。

また、垂木の重要性が分かれば、リノベーションの際の屋根の打合せが進みやすくなるでしょう。

リノベーションにおいては、屋根裏の有効活用を検討する際には出て来る可能性のある部分なので、しっかりと覚えましょう。