シックハウス症候群とは?原因・症状・対策を徹底解説

今では聞く機会が少なくなりましたが、過去には「シックハウス症候群」という疾患が流行し、社会問題にまで発展しました。原因は住宅建材から放散される化学物質。そのため、特に新しい建材を使っている新築住宅が危険視されました。
さて、この話は過去のものとなったように思われますが、実はそうとも言い切れません。家づくりをこれからする人にとっては、知っておくべき話なのです。
そこで、この記事ではシックハウス症候群を取り上げ、疾患の特徴からはじめて、リノベーションとの関連性まで解説したいと思います。
シックハウス症候群とは
まずはシックハウス症候群のアウトラインについて解説します。
どのような疾患か
冒頭にも挙げたように、シックハウス症候群は住宅内で発生する気化した化学物質によって発生する疾患です。
住宅建材は時代とともに高性能になり、高気密化と高断熱化を実現しました。省エネ性をはじめとする性能を向上させたのです。
しかし、その裏には接着剤をはじめとする化学物質が大量に使われた背景がありました。
そして、その接着剤などからホルムアルデヒドをはじめとする化学物質が空気中に放散され、シックハウス症候群の原因となったのです。
なお、シックハウス症候群は化学物質が原因とされていますが、発症のメカニズムなどは謎に包まれています。
シックハウス症候群の症状
シックハウス症候群には様々な症状が見られますが、代表的な症状は次の4つです。
皮膚や目、のどなどの刺激症状(目がチカチカする、のどが痛い、などの症状)
全身倦怠感
めまい
頭痛・頭重
一見すると軽い症状にも見えるかも知れませんが、家の中で発症することもあるため非常に厄介です。
例えば、寝室で寝ている間、ずっと化学物質のある環境に晒されたらどうでしょうか。…その厳しさは想像を超えると思われます。
シックハウス症候群の原因
シックハウス症候群の原因は化学物質であることは述べましたが、ここではもう少し詳しく原因を挙げてみます。
原因物質について
シックハウス症候群の原因となる化学物質はホルムアルデヒドがメイン…とは言いますが、詳しく言うならば次の13の物質が原因として考えられています。
ホルムアルデヒド
アセトアルデヒド
トルエン
キシレン
エチルベンゼン
スチレン
パラジクロロベンゼン
テトラデカン
クロルピリホス
フェノブカルブ
ダイアノジン
フタル酸ジ-n-ブチル
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
このように、原因物質はホルムアルデヒド以外にも多くあります。しかも、極めて少量の放散であっても症状が発現するため、症状と原因物質の因果関係の特定は困難です。
住宅建材全般
化学物質の放散原因の第1は住宅を構成する建材全般です。
住宅を構成する部材としては、集成材や合板、そして接着剤や塗料などがありますが、どれもが石油化学製品を使ったものであるため化学物質は含まれています。
その中でも問題視されているのが接着剤。接着剤の硬化は化学反応によって進みますが、その途上で化学物質が放散され、室内の空気を汚染してしまうのです。
ちなみに、シックハウスが問題になってから有害物質を減らした資材が出ていますが、それであっても化学物質の放散量はゼロではないため、危険性もゼロにはなりません。
家具類
化学物質の問題は今では非常に重大な問題です。
しかし、この問題は国内のものであって、海外が同じ状況とは限りません。海外で作ったものが化学物質の放散の原因にもなることがあるのです。
さて、家具が化学物質放散の原因になっていることをご存じでしょうか。家具は国内生産のものもあるのですが、輸入家具もあります。輸入家具の中には化学物質が多く含まれているケースもあるのです。
なお、今は家具も通信販売で販売されています。通販の商品の化学物質の含有は確認できません。化学物質のリスクは未知数です。
換気不足
換気不足も原因の1つです。
建築資材から蒸発した化学物質は室内の空気中に充満します。しかし、その時点で換気によって外に追い出されれば、室内の化学物質の濃度は下がり、シックハウスの発現リスクも抑えられるでしょう。
ところが、換気が不十分の場合には空気中に充満した状態で放置されることになります。空気中の化学物質の濃度は下がらないので、シックハウスの発現リスクも下がらないのです。
ちなみに、空気中に放散された化学物質は簡単には分解されません。条件にもよりますが、空気中を漂う期間が非常に長くなると考えられます。
「F☆☆☆☆」(エフフォースター)について
今の住宅建材を見ると「F☆☆☆☆」(エフフォースター)という印を見ることがあります。
実は、この印は化学物質放散に関するもの。資材選びの手がかりになるので知っておくべきです。
「F☆☆☆☆」とは
FはJIS・JASの認定した基準でホルムアルデヒドの放散濃度を示す記号です。FはF☆☆~F☆☆☆☆まで段階的に分けられています。この内のF☆☆☆☆は放散濃度が低く、安全性が高いとされています。
つまり、使用する建材にF☆☆☆☆のマークが付いていたら安心して使える訳です。
ところで、この基準は内装仕上げの制限に関係しています。F☆☆とF☆☆☆は使用可能な面積の制限がありますが、F☆☆☆☆は面積の制限はありません。
「F☆☆☆☆」だからと言って完全に安全とは限らない
このように、F☆☆☆☆はホルムアルデヒドの放散濃度が低いため安全性が高いのですが、これでも完全に安全とは言い切れません。と言うのも、F☆☆☆☆であっても微量ながら放散はあり得る訳ですし、ホルムアルデヒド以外の放散物質による症状もあり得るからです。
なお、前にも述べましたがシックハウス症候群と化学物質の因果関係は全部が解明されている訳ではありません。そのため、ホルムアルデヒド以外の化学物質も敬遠することがベターと思われます。
とは言っても、F☆☆☆☆が安全性の点で最善であることには間違いありません。資材はF☆☆☆☆を選びましょう。
リノベーションと中古住宅
このように、シックハウス症候群は家づくりに絡みつく問題と言えるのですが、古い住宅をリノベーションする際にはどのように現れるのでしょうか。
古い住宅の化学物質放散リスク
築年数にもよりますが、古い住宅では化学物質の放散リスクは低いと考えられます。
これは、化学物質の放散は時間と共に減るためです。建築資材に含まれる化学物質は時間と共に蒸発します。その結果、空気中の化学物質も減って行き、安全なレベルに至るのです。
また、古い住宅は今ほどに気密性には優れません。化学物質が外気に逃げやすいので、濃度が下がりやすいのです。
使用する資材には注意が必要
このように、古い住宅であれば化学物質の危険性から免れそうですが、それで安心すべきではありません。リノベーションの場合には新しい部材を使うので、その部材の安全確保が必要なのです。
絶対に安全な資材の入手は困難でしょうが、前述の「F☆☆☆☆」を使うならば安全性が高いリノベーションとなります。資材の発注には注意が必要なので、施工業者と打ち合わせる際にはしっかりと確認をしましょう。
まとめ
シックハウス症候群について取り上げました。
シックハウスの問題は過去のもの…と思う人もいるかも知れませんが、輸入家具の問題を考えると決して侮れないことが分かったことと思います。また、ホルムアルデヒド以外にも疑わしい物質があることも把握できたと思います。
いずれにせよ、古い家を使うからと言っても他人事として捉えるべきではありません。資材や家財の調達には十分に気を付けましょう。
関連記事
人気の事例こだわりタグ: