この記事では、契約不適合責任について捉えます。あわせて瑕疵についても掘り下げて解説します。  

中古住宅を購入してリノベーションをする人は少なくないのですが、取引される中古住宅は全部が高品質とは限りません。時として、住宅のプロでも分かりにくい問題が潜む場合があるのです。 

さて、不動産契約には「契約不適合責任」と呼ばれる責任があります。 

不動産取引上で発生するトラブルを避けるルールですが、中古住宅を売買する立場としては必須の知識と言えます。 

そこで、ここでは契約不適合責任について捉え、併せて瑕疵について掘り下げて解説します。  

契約不適合責任について

 契約不適合責任は売買契約に基づいて引き渡されたものに対して、「種類」「数量」「品質」のいずれかが契約内容に相違があった場合に、売主が買主に対して負う法的責任を指します。 

不動産の場合は隠れた瑕疵を指すことが多いです。例えば、雨漏りやシロアリ被害などが該当します。 

仮に、このような不動産の問題点を知らずに購入した場合、その問題点の責任を売主に問えるのです。 

 

瑕疵の種類

 

 「瑕疵」という用語をご存じでしょうか。 

この用語は「問題点」の意味。例えば、家屋の屋根に問題点があった場合には「屋根に瑕疵がある」といった言い方をします。 

さて、瑕疵には様々な事例がありますが、以下の4つに分類されます。 

• 物理的瑕疵 

• 法的瑕疵 

• 環境的瑕疵 

• 心理的瑕疵 

それぞれについて解説しましょう。 

物理的瑕疵

物理的瑕疵はその名の通り、不動産に発生する物理的な問題です。 

分かりやすい例で言えば、雨漏りや扉や窓の故障、分かりにくい例で言えばシロアリ被害や土壌汚染などです。 

物理的瑕疵にはゆっくりと不具合が進む問題もあります。 

例えば、地盤沈下などは建築後に非常にゆっくりと進みます。体感として感じられるようになるまで1ヵ月以上かかるケースも少なくありません。 

法的瑕疵

法的瑕疵は法律がバックにある瑕疵です。 

法律が起因となる不動産の制限とも言えるでしょう。良い例が再建築不可物件です。 

住宅は接道の義務があり、基準を満たしていないと家を建てることができません。再建築不可物件は主にこの規定に抵触することによる制限。既存の家屋に住むこともリフォームすることも可能なのですが、壊して建替えることはできないのです。 

環境的瑕疵

環境的瑕疵は音や振動をはじめとした外部の環境に起因する瑕疵です。 

音や振動の他、悪臭なども含まれます。 

ただ、環境的瑕疵は瑕疵としてハッキリしないものが少なくありません。 

例えば、焼鳥屋の前を通ると香ばしい香りがしますが、あの香りが毎日続くならば悪臭に感じます。焼鳥屋の隣に引っ越して来た人であれば、悪臭と感じるかも知れません。しかし、不動産としては悪臭としてカウントしません。…この認識の差がハッキリせず、グレーゾーンとなるのです。

 

心理的瑕疵

心理的な問題を抱える物件もあります。これを心理的瑕疵と呼びます。 

例えば、物件内で自殺や殺人事件があったケースです。事例にもよりますが、不動産の告知義務に関係するものまであります。 

なお、告知義務の発生する期間はケースバイケースです。 

例えば、お年寄りの孤独死などは比較的短い期間の告知になるでしょうが、物件内でバラバラ殺人があった場合などは非常に長い間の告知となります。 

 

瑕疵にはグレーゾーンがある

不動産には目で見ても分かりにくい問題があります。 

前述の焼鳥屋が良い例なのですが、ある人は「問題」と判断するのに、別の人は「問題なし」と判断する問題があるのです。 

ここでは、具体例をもう少し挙げてみましょう。 

反社会勢力と思われる団体拠点がある

引越しをしてみたら暴力団の事務所と思われる建物がそれほど遠くない場所にあった。 

…というケースは意外に多いことと思います。 

この事例を瑕疵と判断することは簡単ではありません。 

というのも、暴力団に似たグレーゾーンの集団も存在するからです。暴力団事務所と思われた場所が、実はこのグレーゾーンの集団の場所であることもあり得るからです。 

カルト宗教の施設がある

過去にはなりますが、カルト宗教による凶悪犯罪があったため、同様の宗教に嫌悪感を示す人が多いことと思います。そのため、そのような宗教団体の施設を見ると気分を害する人もいることでしょう。 

ところで、そのような施設が近隣にあることが瑕疵に当たるか…というと、極めてナーバスな問題となります。宗教の自由は憲法で認められていますし、どこからがカルトかの線引きはできないからです。 

 

瑕疵になりにくい問題

不動産には瑕疵になりにくい問題があります。 

グレーゾーンよりもホワイトに近い部分。…ただし住みにくいです。 

街の風紀が悪い

街の風紀が悪いケースは少なくありません。 

夜間は酔っ払いが毎日のように騒ぎ、子供たちが飲酒や喫煙に興じる地域。当然ながらこの風紀は地図には載りません。不動産の瑕疵にはならないでしょうが、…間違って引越しをしてしまった場合、毎日の生活が思いやられます。 

政治色が強すぎる

政治色の強い地域は非常に多いことでしょう。 

政党ポスターが多く貼っている場所はよく見かけます。 

しかし、政治色が「強すぎる場所」はどうでしょうか。例えば、選挙のたびに無言の圧力を感じる場所。…やはり住みにくいと思いますが、不動産の瑕疵にはならないと思われます。 

害虫・害獣の出現

スズメバチの多い地点、ハエが大量発生したことのある地点は多くあります。 

また、最近では害獣の問題も聞きます。野良猫の問題のみならず、脱走したハクビシン、さらには熊の出没まで聞きます。 

これらは地域の問題としては取り上げられるでしょうが、不動産の瑕疵には挙げられにくいです。 

 

トラブルを避けるためには

住環境は良好であるべきです。 

そのために重要なのが確認作業なのですが、どのように確認するべきなのでしょうか。 

地図だけで判断しない

不動産の判断は地図や図面が基本となりますが、それだけでは判別がつかないケースが少なくありません。騒音、振動、悪臭、風紀など、地図に載らない生活環境を脅かす要因はいくつもあるのです。 

そのため、不動産は地図や図面だけでは判断しない方がベターです。可能な限りの現地情報を確認しましょう。 

自分の足で現地に行く

不動産の判断は実際に自分の目で見て確認するのが一番です。 

これは不動産そのものだけでなく、周囲の環境も重要になるためです。 

また、時間や時期をずらしながら確認に行くとベターでしょう。時間帯によって発生する騒音や、風向きによって変わる悪臭などがあるからです。 

今ではスマホで動画が見られるようになりましたが、スマホでは悪臭や風紀までは分かりません。自分の足で現地を確認することをおすすめします。

 

探偵の起用もアリ

不動産の問題は現地に行っても分からないものもあります。 

例えば、大騒ぎをする迷惑住人や緊迫するほどの仲違いをしている人間関係。そのような問題は実際に住んでみないと分かりません。 

ところで、探偵の中には不動産の入居前の調査を請け負うところがあります。現地で嫌なウワサを耳にしたならば、探偵事務所と相談するのも良いかも知れません。 

まとめ

契約不適合責任について取り上げました。 

瑕疵の内容やグレーゾーンのもの、問題を避けるための方策が把握できたことと思います。 

また、これから中古住宅を購入する人の中には、確認の重要性を再認識した人も多いのではないでしょうか。 

いずれにしても、良い不動産を手に入れるためには確認を厳重にする必要があります。自分の足で歩き、目と耳での確認をするべきでしょう。