首都圏の中古マンション市場は、2025年も依然として価格上昇が続いています。しかし、その内容を詳しく見ると、エリアによって状況が異なりつつあるようです。この記事では、2025年の最新データをベースに、首都圏の中古マンション市場の動向と、それに伴うリノベ需要の今後の行方について検証していきます。

2025年の首都圏中古マンション市場最新動向


2025年に入っても、首都圏の中古マンション価格は高騰傾向が続いています。東日本不動産流通機構やアットホーム株式会社が発表したデータによれば、成約価格は依然として前年を上回る水準です。

 

ただし、その上昇幅や勢いには変化が見られ、特に都心部と郊外の違いが顕著になりつつあります。まずは、最新の市場動向を紐解いていきましょう。

首都圏の中古マンション市場動向

東日本不動産流通機構の「首都圏 中古住宅市場の概況(2025年7~9月期)」によると、首都圏の中古マンション成約m2単価の前年同期比は21期連続で上昇しており、高値圏が続いています。特に価格をけん引しているのが東京都心部です。

 

アットホーム株式会社による2025年6月の調査でも、首都圏の平均価格は上昇傾向を示しています。新築マンション価格の高騰が続き、一般の消費者には手が届きにくい水準になっていることが、比較的リーズナブルな中古マンション市場の人気を後押ししています。

 

一方、中古マンションの新規登録件数や在庫件数は、2024年上期から前年同期比でマイナスが続いており、需要の高まりに供給が追いついていない状況も読み取れるでしょう。

都心部と郊外で異なる状況

価格高騰が続いているとはいえ、首都圏を一括りにはできません。エリアごとで、状況に明確な違いが見られます。

 

例えば、同じ東京都内でも、都区部のm2単価が前年比14.4%と強い上昇傾向にある一方、多摩地方では+0.9%にとどまっており、ほぼ横ばいに近い状況です。

 

また、埼玉県や千葉県では、m2単価が前年比でマイナスとなっており、価格上昇が全体的に落ち着いてきている様子が見られます。神奈川県でも、横浜市や川崎市といった都市部では価格上昇が続いている反面、それ以外のエリアのm2単価は前年比−2.7%と下落に転じている状況です。

 

このように、利便性や資産価値が高い都心部や主要都市では価格がさらに押し上げられ、それ以外の郊外エリアでは価格が微減傾向という「二極化」の様相が強まっています。

 

(出典)東日本不動産流通機構「首都圏 中古住宅市場の概況(2025年7~9月期)

(出典)アットホーム「2025年6月 首都圏における「中古マンション」の価格動向

 

2025年の中古マンション市場が高騰している3つの理由


近年、首都圏を中心に中古マンション市場が高騰している背景には、どのような理由があるのでしょうか。ここでは、以下の3つの理由について詳しく解説します。

 

(1)新築マンションの価格が高騰しているから

(2)外国人投資家による投資目的の購入が増えているから

(3)立地や利便性の良い物件が人気だから 

(1)新築マンションの価格が高騰しているから

中古マンション市場が高騰している最大の要因は、新築マンションの価格高騰です。近年、建設業界の深刻な人手不足による人件費の上昇や、円安、世界的な資材価格の上昇などを受け、建築コストが大幅に上がっています。

 

さらに、都心部の再開発や好立地な物件への投資需要も相まって、新築マンションの分譲価格はかつてないレベルに達しています。不動産経済研究所によれば、2025年度上半期(4〜9月)の首都圏新築マンション1戸あたり平均価格は9,489万円と過去最高を記録。特に東京23区では平均1億3,000万円を超えており、一般の消費者にとって現実的な価格とは到底いえません。

 

その結果、「新築は高すぎて買えない」と考えた人々の需要が中古マンション市場へとシフトしています。少しでもリーズナブルに、かつ希望エリアで住まいを手に入れる方法として、中古マンションの人気が相対的に高まっているのです。

 

(2)外国人投資家による投資目的の購入が増えているから

中古マンション価格を押し上げているもう一つの要因が、投資目的の購入の増加です。とりわけ、外国人投資家や日本の富裕層による購入が目立ちます。

 

 

歴史的な円安傾向も相まって、海外の投資家から見ると、東京の不動産は割安感があります。利便性が高く資産価値の落ちにくい千代田区・港区・中央区などの都心部では、投資目的での中古マンション購入が活発化しているのです。

 

また、近年の株高傾向で資産を増やした国内投資家が、安定的な資産運用先として中古マンションに注目していることも価格上昇の一因になっています。

 

(3)立地や利便性の良い物件が人気だから

中古マンションが選ばれる理由は価格だけではありません。「立地の良さ」も大きな魅力です。一般的に、駅に近い場所や利便性の高い都心部などは古くから開発が進んでいるため、新築マンションを供給できるまとまった土地はほとんどありません。

 

その点、中古マンションであれば、新築ではなかなか見つからない駅近、あるいは都心の一等地といった好条件の物件が出回ることもあります。

 

将来的な売却を考えた場合、この立地の優位性は重要です。たとえ建物が古くても、立地と管理さえしっかりしていれば価値が下がりにくい、あるいは購入時より高く売れる可能性もあります。そのため、将来の売却や住み替えを見据えた消費者からのニーズも高まっていると考えられます。

 

今後の中古マンション市場とリノベ需要の見通し


2025年の中古マンション市場の動向と背景について見てきました。では、2026年以降のマーケットやリノベ需要はどのように推移していくのでしょうか。それぞれの見通しを考えていきます。

中古マンション市場の「二極化」は今後も進む

2025年後半も都心部を中心に価格上昇が続く中古マンションですが、専門家の間では、2026年以降も「二極化」が進むという見方があります。なぜなら、都心部の価格が下がる要因が今のところ見当たらないからです。

 

前述のとおり、東京の不動産価格は高騰しているとはいえ、ロンドンやニューヨーク、香港といった世界の大都市と比較すれば、まだ割安感があります。そのため、海外からの旺盛な投資需要は当面続くと予想されます。

 

また、国内の住宅購入層に目を向けても、将来的な住宅ローン金利の上昇懸念から、少しでも購入費用を抑えたいという意識が働くでしょう。結果、高額な新築物件ではなく、リーズナブルな中古物件を選ぼうという動きは今後も続くと考えられます。

 

しかしその一方で、日本全体では人口減少と少子高齢化が一層進行します。地方都市や、都心部へのアクセスが悪い郊外エリアでは、空き家が増加し、住宅需要が小さくなる流れは止められません。

 

結果として、資産価値や利便性の高い都心部とそうでない地方・郊外エリアとで、中古マンションの価格差が開いていく、「二極化」がますます顕著になっていくのではないでしょうか。 

都心部を中心にリノベ需要はますます高まる

都心部で中古マンションの人気が高まるにつれて、リノベへの関心度も高まっています。

 

株式会社矢野経済研究所の「住宅リフォーム市場に関する調査(2025年)」によると、住宅リフォーム市場全体の規模は、2023年の7.4兆円をピークに今後は微減傾向で推移すると予測されています。2025年は前年比0.7%減の7.3兆円、2026年は7.2兆円と予想され、リフォーム全体で見れば、需要は少しずつ落ち着いていく見通しです。

 

その一方で異なる動きを見せているのが、都心部を中心とした「中古マンション購入+リノベ」市場です。リノベプラットフォームを運営するリノベる株式会社の調査によれば、2024年の平均リノベ費用は1,570万円に達し、2022年からのわずか2年間で280万円も上昇。前年比で見ても15%の上昇となっています。

 

このことから、都心部において「新築マンションは高すぎて選択肢にない」層が、立地の良い中古マンションを購入し、リノベに大きな予算をかけて自分好みの住まいにする、というトレンドが強まっていると考えられるでしょう。

 

(出典)矢野経済研究所「住宅リフォーム市場に関する調査を実施(2025年)

(出典)PR TIMES「リノベる。ユーザーレポート~「中古マンション購入+リノベーション」ユーザーの住まいトレンドを調査~

 

20代〜30代前半の若い層でもリノベ需要が高まる

前述のリノベる株式会社の調査では、同社のサービス「リノベる。」ユーザーに占める20代・30代前半の割合が、2022年の33%から2024年には47%へと大幅に増加していることが判明しています。

 

これは、都心部の家賃高騰や新築マンション価格の高騰を受け、初めて住宅を購入する若い世代が、現実的なマイホーム取得の手段として「中古購入+リノベ」を積極的に選ぶようになっていることを示しているのかもしれません。

 

また、人気のリノベテイストにも変化が見られます。以前は、コンクリート打ちっぱなしやむき出しの配管といった「いかにもリノベのおしゃれな部屋」が主流でした。しかし、最近では、シンプルでスタイリッシュな「ナチュラルモダン」や、家事動線や収納効率といった「使い勝手の良さ」を重視する傾向が強まっているといいます。

 

こうした結果を踏まえると、「中古購入+リノベ」が感度の高い一部の人だけのものではなく、「マイホームのスタンダード」として広く定着してきているといえるでしょう。

 

まとめ

この記事では、2025年の最新データに基づき、首都圏の中古マンション市場の動向とリノベ需要の行方について解説しました。

 

首都圏の中古マンション市場は、2025年に入ってもなお、新築価格の高騰や投資需要を背景に高値での取引が続いています。しかし、内実を見ると、「都心・主要都市部」と「郊外」での二極化が進んでいる状況です。

 

今後はこの二極化が一層顕著になると予想されると同時に、都心部では「新築を選ばない」層による中古マンション購入が続きそうです。また、初めて住宅を購入する20代〜30代の若い層も含め、中古物件を購入して自分たちのライフスタイルに合わせてつくり替える「中古購入+リノベ」の需要は、ますます高まっていくでしょう。