今回はパッシブデザインを取り入れたリノベーションについて解説します。

近年省エネ性能の高い家づくりが大きな注目を浴びています。その中でも「パッシブデザイン」を取り入れた住宅が特に注目されています。 

 

高性能で快適な住環境を目指せるパッシブデザインは、環境への負荷も軽減が可能です。2050年のカーボンニュートラルな社会実現のためにも大きな力を発揮するとされています。 

 

しかし、「そもそもパッシブデザインって何?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。そこで、今回はパッシブデザインを取り入れたリノベーションについて解説します。

パッシブデザインを取り入れたリノベーションとは


パッシブデザインとは、機械に頼るのではなく太陽の光や熱、風などの自然の力を利用して快適な住環境を実現する設計技術のことです。自然エネルギーをうまく利用することにより、家で消費するエネルギーの量を減らすことができます。 

 

快適な室内空間を取り入れながら、光熱費の節約が可能な家です。新築住宅をパッシブデザインで計画する方も多いですが、最近では既存住宅にパッシブデザインを取り入れるリノベーションも行われています。パッシブデザインの要素を取り入れることで、既存住宅でも快適に過ごせる住環境が実現できるのです。 


パッシブハウスとの違い

パッシブデザインと似た名称で「パッシブハウス」というものがあります。パッシブハウスとは、ドイツのパッシブハウス研究所が開発した省エネ住宅の設計技術です。 

 

パッシブハウスには、以下のような明確な基準が設けられています。 

  • 冷暖房負荷 15kwh/m2以下であること 

  • 一次エネルギー消費量 120kwh/m2以下であること 

  • 気密性能として50Paの加圧時の漏気回数0.6回以下 など 

上記の基準を満たして、「パッシブハウスジャパン」から認定を受けることで初めてパッシブハウスと名乗れます。 

 

一方でパッシブハウスは、あくまでも自然の力を活用して省エネ住宅を実現させようとする設計技術のため、特に認定基準は設けられていません。 

 

パッシブデザインを取り入れたリノベーションは難易度が高い

パッシブデザインを取り入れたリノベーションは可能ですが、難易度が高いです。 

新築の場合、何もない更地からパッシブデザインを取り入れた家づくりをするため、建物の配置や窓の位置などを決め、綿密な計算をして家を建てていきます。 

 

しかし、リノベーションは、既存の土地や構造を変えられないため、今ある建物を利用しながらどのようにパッシブデザインを取り入れるのかを計画しなければなりません。 

 

そのため、パッシブデザインのリノベーションを希望する場合は、パッシブデザインの施工実績が豊富な会社に依頼し、しっかりと打ち合わせを行うことが重要です。 

パッシブデザインを構成する5つの要素

パッシブデザインは5つの要素によって構成されています。それぞれの要素に関して表にまとめてみました。 

断熱 

断熱性能の高い家は、外気の影響を受けにくい。家の隙間が少ない(高気密)ので室内の熱が外に逃げにくくなる。 

 

パッシブデザインの基本は「高気密・高断熱」。外壁や屋根・床・窓の断熱性能を高めて家の保温性能を上げていく。 

日射遮蔽 

夏の涼しさを実現するために、日差しを窓から入れないようにする。庇や軒をつけて直射日光を多く防ぐことができる。これにより冷房に使うエネルギーを減らせる。太陽の位置が低い冬にはしっかりと太陽の光を取り込めるように、ちょうど良い長さの軒や庇をつけるのがポイント。 

通風 

室内に風を行き渡らせて室内に溜まった熱を排出させることができる。地域ごとの風の向きを踏まえて建物内での風の動きを予測し、最適な窓配置を行う。 

 

風を呼び込むウインドキャッチャーを設置して風を取り込んだり、吹き抜けや高窓を利用して、立体的に風を通して家の中の熱を排出することも重要。 

採光 

昼間は照明なしでも過ごせるようにリビングなどには2面以上の窓を設置する。これにより照明にかかる電気代の節約が可能。他にも高窓や吹き抜け・天窓を設置するなどの工夫をする。 

蓄熱 

冬は窓から日射熱を取り込んで、熱を蓄えることで室内を温められる。窓の大きさや種類・位置、庇や軒の角度や大きさなどを検討して、最適な設計計画を建てることが重要。 

 上記の5つの要素をバランスよく取り入れることで、パッシブデザインを実現できます。 

パッシブデザインのメリット


パッシブデザインは自然エネルギーを利用して快適な家づくりを実現できますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 

考えられる4つのメリットをご紹介します。 

快適な室内空間を手に入れられる

パッシブデザインの最大の魅力は、快適な室内空間です。パッシブデザインは高気密・高断熱仕様になっているため、室内の温度が安定しやすくなります。 

 

冬はしっかりと温められた空気が外に逃げにくくなり、外からの冷たい空気が室内に入り込みにくくなります。また、南面に設置された大きな掃き出し窓によって太陽の光を取り込めるのでポカポカと暖かい室内空間の実現が可能です。 

 

反対に夏は室内で冷やした空気が外に逃げにくく、外の熱気を取り込みにくいので、冷房を使ってしっかりと家の中を冷やすことができます。窓からの太陽の熱は庇や軒でガードされるので、室内が暑くなる心配もありません。 

 

また、高気密・高断熱仕様だと、家全体の温度差も小さくなるためどの部屋に移動しても快適に過ごせるというメリットもあるのです。 

光熱費が安くなる

自然エネルギーを利用するパッシブデザインは、冷暖房をフル稼働させなくても快適に過ごせます。つまり、冷暖房にかかる光熱費を削減できるということです。 

 

最近では光熱費の高さに苦労している方も多いですが、パッシブデザインならその負担を少しでも減らす手助けができます。 

家族の健康を守れる

パッシブデザインの家は、気温や湿度も安定しやすいです。そのため、家庭内での事故を防いで家族の健康を守れます。 

 

例えば、猛暑が続く夏は室内でも熱中症の危険性があります。パッシブデザインの家なら冷房をつけることで室内の温度が一定になりやすいので熱中症のリスクも少ないです。また、高気密・高断熱仕様だと湿度による結露も発生しにくくなるため、カビやダニも繁殖しにくくアレルギーも発症しにくくなります。 

 

冬は、温度差によるヒートショックの危険性があります。ヒートショックを発症すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクがあるため、大変危険です。また、乾燥肌や喉の痛みなど、日々の生活でのトラブルも起きやすいです。しかし、パッシブデザインの家なら、室内の温度が一定になり、急激に寒い・湿度が低いと悩まされることはありません。 

パッシブデザインの快適さは家族の健康を守ることにつながります。 

資産価値が高まる

パッシブデザインの家は高気密・高断熱仕様であり、長期に渡って快適に過ごせる家です。 

省エネ性能の高い家として評価されれば資産価値が高まります。ここにさらに耐震性能を高める設計を加えれば、「長期優良住宅」の認定を受けることができます。 

 

将来的に売却を予定している方や、子供・孫世代に家を譲る予定の方は、パッシブデザインを建てるのも良いでしょう。 

パッシブデザインのデメリット

 パッシブデザインは非常にメリットの多い設計ですが、デメリットも存在します。考えられる3つのデメリットについて見ていきましょう。 

コストが高い

パッシブデザインの家を実現するためには高いコストがかかります。例えば、断熱性能を高めるために高性能で厚みのある断熱材を利用したり、ペアガラスやトリプルガラスなどの窓を採用したりする必要があります。また、光熱費の節約のために太陽光発電を搭載したい方もいるでしょう。太陽光発電は搭載容量によっては100万円以上することもあるため、非常に初期費用が高いです。そのため、住み始めてからのローン返済で大変な思いをする方もいるでしょう。 

 

パッシブデザインの家は、省エネ性が高くて光熱費などのランニングコストが低いので、初期費用も10〜15年程度で回収できるとされています。しかし、初期費用が高いとその恩恵も感じにくいという方もいるかもしれません。 

立地によっては十分に発揮できない

自然エネルギーを利用するパッシブデザインの家は、立地によっては十分に力を発揮できない可能性があります。例えば、隣りの建物が影響して十分に太陽光を取り入れられないなどがあります。特にリノベーションの場合、家の位置を変えることができないため、設計の難易度も高いです。 

うまくパッシブデザインを取り入れるためにも、施工実績の豊富な施工会社に相談することが大切です。 

設計を依頼できる会社が限定される

全ての会社がパッシブデザインを設計できるわけではありません。パッシブデザインには特別な知識と技術力が必要になるため、設計・施工実績の豊富な会社を探す必要があります。 


まとめ

 パッシブデザインについて解説しました。パッシブデザインは、自然エネルギーを利用して快適で気持ちの良い住環境を実現できる設計技術です。 

 

パッシブデザインについてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ当社へご相談ください。