アスベストとは

アスベストとはどのような物質なのでしょうか。 わかりやすく解説します。
アスベストという素材をご存じでしょうか。
燃えない素材として様々な場所で使われていた歴史があります。
建築から自動車、さらには理科の実験室にある器具にまで使われてたのですが、今では完全に使われなくなりました。
アスベストが完全に使われなくなった理由は健康被害を受ける可能性があるからです。…しかも、生命にまで関わるケースが少なくありません。
ところで、アスベストは使われなくなりましたが、使われたものが残っているので現存しています。 では、アスベストとはどのような物質なのでしょうか。 わかりやすく解説します。
アスベストとは
まずはアスベストとはどのようなものかに迫ってみましょう。
悪名高い物質ではあるのですが、なぜ悪いかが分かることと思います。
どのような物質か
アスベストは鉱物の一種で繊維状のもの。破壊される時も繊維状に分かれるのが特徴です。
物性としては耐久性・耐熱性・耐薬品性・電気絶縁性に優れ、安価な点が大きなメリットです。そのため、様々な場面で使われました。
しかし、この物質は空気中に飛散しても繊維状になり、飛散したものが人体に吸い込まれることが分かりました。
そして、大量に長期間に渡って吸い込まれた場合には、肺がんをはじめとする様々な危険な健康被害を起こすことが分かったのです。
アスベストの歴史
アスベストの歴史は非常に古く、紀元前からとも言われています。
日本で使われるようになったのが19世紀で、大量に使われるようになったのは高度経済成長時代です。アスベストはこの時期に大量に社会に浸透したのですが、近年になって健康被害の原因であると指摘され、使われなくなりました。
ちなみに、2006年(平成18年)9月から製造・使用などが全面的に禁止されています。
アスベストとリノベーション
前述のように、今では使われなくなったアスベストですが、昔の住宅では含まれているリスクが高いです。そのため、古い住宅をリノベーションするためにはアスベストについても知る必要があります。
リノベーションの事例を見ると築50年を超える住宅が改装された事例を見かけます。そのような住宅はアスベスト使用である可能性が非常に高いので注意が必要となります。
リノベーションの際にはアスベストの問題から目を背けることなく、前向きに取り組むことが、施主の立場としては必要となるでしょう。
アスベストが使われた主な建材
アスベストを使った建材は多岐に渡ります。
以下に代表的な物を挙げてみましょう。
吹付け石綿
吹付けロックウール
石綿含有保温材
スレート波板
スレートボード
けい酸カルシウム板
スラグ石膏板
押出成形セメント板
窯業系サイディング
ロックウール吸音天井板
なお、アスベストがどれくらい含まれているかは製造年代によっても異なります。
アスベストの除去について
では、アスベストの除去方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
主な方法を挙げてみましょう。
除去工法
アスベスト建材には下地材に設置しているものがありますが、除去工法はこの下地材から除去する工法です。アスベスト含有の部分全部が取り去られる工事なので、推奨される工法となっています。
除去は専用の機材で行うため、費用は高くなる場合が多いです。
封じ込め工法
アスベストを吹き付けてある素材の上から溶剤を吹きかける工法です。
溶剤を吹き付けることによって、アスベストの飛散を防ぎます。
囲い込み工法
アスベストの部分をアスベスト以外の資材で囲んで飛散を抑える工法です。
ただし、この工法では工事の状況によってはアスベストが残ってしまうケースもあります。
剥離工法
アスベストを軟化する薬剤をアスベストに吹き付け、その軟化した層ごと除去する工法です。
作業後の処理が、他の工法を比較して容易な点がメリットです。
超高圧水を使う方法
アスベストを含んだ塗料を除去する方法で、超高圧水を使います。
水によりアスベストを含む層を湿潤化できるので飛散が抑えられます。
使用するのが水だけなのが特徴。環境にも優しいと言われています。
アスベストに関する補助金について
アスベスト除去に関しては補助金が出る場合があります。
補助金の対象は「アスベスト調査」と「アスベスト除去工事」の2つです。
補助金制度は自治体によって異なります。また、予算が決まっている場合があるので、早めの確認が必要です。
アスベストの事前調査
建築物の解体にあたってはアスベストの事前調査が法律で規定されています。
これは住宅のリノベーションとは無縁ではありません。前述のように、築年数の経った建築物ではアスベストが使われていた可能性があるからです。
では、どのような調査が行われるのでしょうか。
調査・分析について
アスベストの調査は専門家か有資格者が行います。
調査内容としては書面や図面を確認する「第一次スクリーニング」、現地を確認する「第二次スクリーニング」に分かれます。
しかし、現地調査だけで分かるとは限りません。
その際にはサンプルを採取して分析します。分析を行うのは専門機関です。「定性分析」と「定量分析」という分析方法に基づいて行います。
報告について
アスベストの事前調査の元となる法律は大気汚染防止法です。アスベストを含む建材の有無の事前調査を都道府県に報告することが義務となっています。
また、石綿障害予防規則という規定があり、労働基準監督署にも報告する決まりとなっています。
さらには、石綿含有建材調査者による調査報告も義務化。管理体制は厳重です。
違反・罰則
アスベストに関する法律がありますが、その内容を見ると報告についてだけでも罰則まであります。
罰則は主に下記の違反によって決まります。
アスベスト含有建材の調査・報告義務の怠慢
アスベスト除去作業の基準違反
飛散防止対策の不備
ちなみに、罰則は以下の通りです。
3ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金
6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金
罰則の内容から考えると、この物質がどれくらい危険であるかが推察できます。
アスベストによる人体への影響
このようにアスベストの扱いは非常に厳重なのですが、人体にはどのような影響があるのでしょうか。
ここではアスベストが原因と考えられる健康被害を挙げてみましょう。
アスベスト肺
アスベストによる呼吸器疾患です。
肺の炎症と肺繊維症が長期に渡って続きます。
症状は息切れ、咳、胸痛など。合併症には肺がんや中皮腫などがあります。
なお、この疾患に対する治療法は現代医学にはありません。
肺がん
肺がんは生命を奪う疾患です。
アスベストは肺がんの原因物質とされ、非常に毒性が高いとも言われています。
ちなみに、肺がんは早期ではほとんど症状は見られません。そのため発見が遅くなる場合が多く、気が付いた時には「余命〇〇ヵ月」ということになります。非常に恐ろしい事態です。
悪性中皮腫
悪性中皮腫はがんの一種。肺や胃腸などの臓器の表面の「中皮」という部分から起こります。
悪性中皮腫の致死率は高いです。治療を行わなかった場合には1年以内に50%の人が命を落とします。
まとめ
アスベストについて取り上げました。優れた特性がありつつも、非常に危険な物質であることが分かったことと思います。
また、どのような処置が必要かも把握できたのではないでしょうか。
ともかくとして、前述のようにリノベーションにおいては古い建物を躯体から加工する場面が少なくありません。施主の立場としても、アスベストへの認識は大切です。
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